第18話 デレが理性を殺しに来てます

「ふぅ……足を入れるだけでもだいぶ涼しいな」


 5月なのでまだ川は冷たかったが、日差しが強いためちょうど気持ちいいくらいである。


「叶、どうだ?」


 そうして叶の方を向くと、叶は笑いながら「涼しいよ」と返事をする。


 木の葉の隙間から射し込む太陽の白い光が、ロングスカートが川に浸かってしまわないように両手で少しまくりあげている叶を綺麗に映えさせる。


「そ、そうか」


 ちょっと可愛いと思ってしまったので思わず目をそらしてしまった。もし川に転ぶなんて言うアクシデントが起こったら……もっといいのになぁ……っていやいやいや何考えてるんだ俺思考が変態になってるぞ。


「えい」


 パシャリ、とひんやりした川の水が俺に降り注いだ。


「冷たッ!?」


「今、いやらしいこと考えてる顔してた」


「嘘、顔に出てた!?」


「嘘だよ?まさか……本当にいやらしいこと考えてたんだ?」


 そう言ってジリジリ詰め寄って来る叶。

 あ、やばい。叶が小悪魔の顔になってる……!ていうかカマかけられた!


「ちちち違う!」


「何が違うの?ねぇ律、教えて?」


 後ろに下がるも叶は1歩、また1歩と距離を詰めてくる。だが、距離が完全に詰め切られる前に、それは起こった。


「きゃっ!」


 と、川底の石に躓いたのか急に叶が俺の方に倒れ込んできた。咄嗟に支えこもうとしたが叶の体重(約35kg)が俺の体にのしかかってきたものなのでバランスを崩し、背中から思いっきり川に入ってしまった。大きな水しぶきが上がる。


「ったあ……叶、大丈夫……か……」


 足だけ浸かるような浅い川で良かったと思いつつ、俺の真上に乗っかった叶を見て俺は硬直した。


「私は大丈夫だけど、律は大丈夫?」


「大丈夫」と答えたいところだが、全然大丈夫な状況じゃない。なぜなら……水を吸った服が叶の肌にぴっちりとついて、薄青色の下着が透けていたのである。今まで叶の強烈なアプローチのせいである程度は耐えられるようになった俺だが、さすがに今の状況下着透けには耐えられるはずもなく。

 慌てて目をつぶった俺は叶に告げた。


「えっと、叶、服……」


「服がどうしたの?」


「す、透けてるから……ええと……下着」


しばしの沈黙。


「~~っ///!!」


叶はようやく今の状況に気が付いたのか、バシャバシャと水音を立てながら川を走っていく。


俺は目を開けて音が去っていった方に目を向けると、俺に背中を向けて胸を隠すようにしてしゃがみこんだ叶がいた。


「り、律のスケベ……」


「いや原因はおだけどな?というかいつもの(記憶をなくした)叶だったらこの状況もあんまり動じないと思うんだけど……」


「それとこれは、違うもん。こ、心の準備ができてないときは……ダメ……」


ちょっと言い方があれだが……つまり、叶はいつもああいうことをする前に心の準備をしてるってことか?


「いや……かわいいかよ」


思わずそう言ってしまった律であった。




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