第15話 ちょっとだけからからかい返してみました
映画館デートの翌日。俺は学校で色々とクラスメイトに問いつめられていた。
「昨日映画館に高山さんといたけど、付き合ってるの?」
「え?いや、違……」
「でも、手を繋いでたんでしょ!?」
「そ、それは……」
確かに繋いでたけど……!ていうかそこまで見られてたのかよ!?
そんな俺の気持ちもつゆ知らず、クラスメイトはどんどん質問してくる。
まぁ確かに叶はこの学校では癒しみたいな存在だからこうなるのはしょうがないが、でも見られてるとは思わなかった。
「噂によるとなんでもムニクロで服を選んであげてたとか!」
「そしてえっちい格好の服を買って家でそういうプレイを……!」
「おい待て。なんか話が盛りに盛られてないか?」
みんながここまでこうなっているのにはわけがある。そう、「俺と叶が兄妹でずっと一緒に住んでいる」ということを知らないのである。
もし仮にみんながそれを知っていれば、さすがに義理ということまでは分からないと思うので「兄妹として一緒に出掛けていた」と誤魔化せたのだが……。
「とにかく、確かに高山さんと出掛けていたのもなにかの見間違いだ。俺は何も知らない」
そう言って否定すると俺は机を離れ、教室を後にした。クラス内からは「照れてるね」「照れ隠しだな」とか聞こえてきたが無視を貫いた。
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帰り道。
「律、なにかあったの?」
今朝の件があってか、表情に疲れが出ていたようである。叶はそんな俺の様子に気づき心配そうな表情をした。
映画に行ったとき、それをクラスメイトに見られていたと正直に話した方がいいだろうか。いやでも、そうすると叶に変な気を使わせることになってしまう。それはなんだか申し訳ない。
「ちょっと、映画館の件でいろはに色々聞かれてな」
俺はわざとらしく肩をすくめてみせる。結局言わないことにした。
けど学校も狭い。噂はすぐに叶の耳に届くだろう。その時に叶が口を滑らせなければいいのだが。
「色々って?」
「どんな話をしたのか、とか俺たちがいなくなったあとどこに行ったのか、とかそういう話だよ」
そう言うと、叶は思い出したように笑みを浮かべる。
「照れてた律、可愛かったってことも言ったの?」
叶、また俺を照れさせようとしているなこれ。まぁいい。その手には慣れてきた。普段照れさせられている分の仕返しをしてあげよう。
「叶がぬいぐるみをめっちゃ好きだったっていうことは言ったな」
そうからかうと叶はポフン、と顔を真っ赤に染める。動揺しているのか口を小さくパクパクさせている。
「////えっ……えっ……えっ……」
「冗談だけどな」
俺がからかい口調でそう言うとさらに顔を赤くしてポコポコ叩いてくる。
「律のバカ、バカ……!」
結局俺は帰り道、しばらく叶にポコポコ叩かれ続けていた。
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