第12.5話 律のセンス

それはまだ俺と美咲が付き合う前の出来事だ。俺は無事に美咲を初デートに誘えた喜びでルンルンだった。


「なぁ律、聞いてくれ」


俺は教室の隅で1人スマホをいじっていた律の机の前に座った。律は「ん」と声だけ発し、いつもの「聞いていますよ」アピールをする。


「赤田さんを……デートに誘えたんだ!」


その言葉を聞いて、律はピクっと眉をひそめる。そして訝しげな表情を浮かべた。


「よく誘えたな。お前のことだから断られて撃沈してるかと思ってたけど」


「この俺にかかれば……イチコロさ」


俺はドヤっとキメ顔するが、律はため息をつき視線をスマホに戻す。


「それで、ただデートの自慢をしに来たわけじゃないんだろ?」


「ああ。なんせ初めてのデートだからな。その……デートに着ていく服を、選んで欲しいんだ」


俺だけで服を決めるのはアレだし、やっぱり他人の意見も聞かないとという気持ちから俺らそんなことを律に聞いた。だが、俺はその言葉を後々後悔することになったのだった。


────────────────────


ショッピングセンターに来た俺たちはムニクロにて、服を選んでいた。

とりあえず俺の意見を聞いてもらって、それから律の意見を聞かせてもらおうと思っていた俺は、律に色々と話していた。

だが、律の表情は良くなく、小難しいままだった。


「どこか、良くなかったの?」


「いや、なんだろうな。それだといろはの良さが全面的に薄れてる気がするんだよな。こう、押し殺してる感じ」


ほう、律の割にはそれらしいことを言うじゃないか。お兄ちゃんうれしいぞ……(感激)


「じゃあ、律がいいと思う服を選んできてくれないか?律の意見も知りたいし」


「まぁ、いいけど……」




10分後。




「………律さん?」


「?」


「こ、これが、俺という個性を全面的に出した……結果ですかね?」


「ああ……?」


「………」


律が選んだ服装は、もはやパリピそのものだった。なんだろう、ギラッギラのチャラッチャラなんですが。しかも上下の服が絶妙にアンバランス。これ以上詳しく説明すると泣けてくるので勘弁してください。


ていうか律の俺のイメージそんななの?


「俺って……陽キャの部類?」


俺は恐る恐る律に尋ねると、彼は目を丸くする。


「え、違うのか……?」


「ちげーわ!俺は陽キャじゃねーよ!?」


「だって騒がしいじゃないか」


「だったらこの世のうるさいヤツ全員陽キャになるぞ!?応援団みんなパリピだぞ!?」


俺はこの時、律が壊滅的なセンスの持ち主であることを、この身をもって実感したのだった。




■■■■■■

「まじかよ律……」となった人は★または感想をぶん投げてくれると嬉しいです。


※全国の応援団の皆さんごめんなさい

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