第11話 幼なじみによる悪企み

「いろは……?」


「よ、よう、律!ぐ、偶然だな!?」


 いろはは俺と目が合うなり不自然に動揺する。いつものいろはなら「よう。え?律もあの映画見たの?俺も見たよ!」みたいなノリだと思うんだが。


「めちゃくちゃ動揺してないか?」


「そんなことないよ、ほんとに!まじで!」


 ……怪しい。何か隠してるな。カマをかけてみるとするか。


「今日は1人で来たのか」


「おう、1人だぞ?」


 あ、確信犯だこいつ。いろはは、1人でこんな場所来ない。大抵は美咲さんか友人と一緒のはずである。しかもさっき美咲さんいたしな(バイト中だったけど)。


「さっき美咲さんがいたけど?」


「んえっ!?い、いやぁ……そ、そうなのかぁ……偶然だなぁ……じゃあ、会いに行くとしようかなァ……なんて」


 そろーりそろーりとその場を離脱しようとするいろは。俺は逃がすまいと肩にポン、と手を置いて引き戻す。


「おい待て。お前が普段1人だとこんなところに来ないのはわかってるんだ……さぁ、全部話せよ……?」


 俺はできるだけ穏やかーに、笑顔でそう言ってあげる。


「り……律さぁん……笑顔なのに、目が笑ってないよぉ……?」


「ウン、ソウダネ?」


 顔がみるみる真っ青になっていろはだった。


 ────────────────────


「さて、言い訳を聞こうか」


 俺はバイト上がりの美咲さんを捕まえて、2人に事情を聞いた。どうやら俺と叶の初デートということで覗きにきたんだそうだが、にしても悪趣味だなこいつら。


「いいか?何度でも言おう。俺は叶が行きたいって言うから一緒に来ただけだ。1人だと心配だしな」


 今、叶はアイスクリームが食べたいと言って店に行ったので、一旦席を外している。


「そう言ってるけど本当はデートを楽しんでしょ?」


「ちげーよ!」


「あ、こいつ顔赤くなったぞ」


「やっぱり図星だね」


 2人はお互い顔を見合わせてクスクスと笑う。確かに楽しんでない訳じゃないが、はっきりそう言われると照れるんだよこっちも……。


「まぁ、でも結果オーライじゃない?ぬいぐるみを抱いて上目遣いされたんだからさ……可愛かった?」


「……まぁ、可愛かったけど」


 その言葉を聞くと、美咲さんはニコッと笑みを浮かべた。


「良かったね、叶ちゃん。可愛かったってよ?」


「へ?」


 美咲さんの視線が俺の後ろに向いているので、恐る恐る振り返る。そこには、頬を赤く染めた叶がいた。ソフトクリームを持つ手がプルプルと震えている。


「あ、いや、その……」


 いろはにヘルプを求めようとしたが。


「いや逃げ足はやっ」


 2人とも綺麗にその場から消えていたのだった。







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