第10話 表情が豊かな義妹 兼 恋人
映画の上映が始まると、映画の内容に引き込まれた。だが、それよりももっと引き込まれたものがある。
ドガァァァン!!
「!?(ビクッ)」
ズガァァァァン!!
「……!(ドキドキ)」
ゴゴゴゴゴゴ……!!
「………!……!!(ハラハラ)」
バゴーーン!!
「………!!(ウルウル)」
……めちゃくちゃ表情豊かだ。
なんだろう、映画も面白いがこっちの方もずっと見ていられる気がする。
ふと、叶と目があった。
(おもしろいね)
暗闇の中、スクリーンの光だけが彼女の表情をほのかに照らす。少し、顔が赤くなってしまった気がしたが映画館で暗闇だったことに感謝した。
(……ああ。おもしろい)
だよね、と頷くと、叶は視線を再びスクリーンに戻す。
俺もスクリーンに視線を戻した。
椅子の下でお互いの手が触れ合う。叶は自然に俺の手を握ってきた。
なぜだかは分からないが、俺は驚きはしなかった。多分、こうしてくることが何となく分かってきていたのだろう。おそらく全部美咲による入れ知恵なのだろうが、それでもいい。
今は受け入れよう。
そう思って、俺は手を優しく握り返した。
────────────────────
~映画終了後~
俺は悶えていた。
(うああああっ!!何やってるんだ俺はぁぁぁ!!??なぁにが「今は、受け入れよう」だよ!?恥ずかしいことを考えながら恥ずかしいことしてんじゃねえよおおお!!)
俺はひたすらに悶えていた。
自分の甘さを。
謎の自己流の世界に1人入り込み、手を繋ぐことを正当化したことを。
……叶の表情に少しだけ夢中になってしまったことを。
「ちょっと、トイレ行って良いか?」
「うん、分かった」
叶に断りを入れると俺はトイレに駆け込んだ。
個室に入り、深呼吸をして焦りを落ち着かせる。
落ち着け……とりあえずの推測だが、おそらく叶は、美咲さんから入れ知恵をされている。
つまり、だ。叶がしてくるデレ行動は、美咲さんが普段いろはにしているデレ行動と同じの可能性が高いのだ。さすがに「どういう場面でこういうことをする」とまでは推測できないが、普段の彼女の行動を思い出せば心の準備はできるだろう。
よし、早速美咲さんの普段の行動を思い出してみよう。えっと……人目が少なくなったら抱きつく。お家デートの際はものすんごいことをする(らしい)。外デートでも腕を組んで歩いて、食事の際はお互い「アーン」し合うのが普通。
……むりむりむりむり!!心臓もたねえ!こんなことされたら俺今度こそ悶え死んじゃうぞ!!??
……もう大人しく悶え死ぬのを待つしかないのか。
「あ、やば」
色々考えているうちに少し時間がたってしまった。叶を1人にしていたら、寂しがってしまうに違いない。
……というかまた「義兄」思考をしてしまった。
俺はため息をつくと、個室の扉を開いた。
「あ」
「ん?」
扉を開け、目の前にいたのは。
「……いろは?」
どうして、いろはがここにいるんだ?
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叶が可愛いと思う人は★または感想をぶん投げくれると嬉しいです
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