第5話 義妹が俺の理性を殺しに来てる件

「~♪」


隣を歩く叶はご機嫌な様子である。相変わらず俺にくっつくのは止まらないため、色々と苦労している(いや、俺が100%悪いんだけどね?)。


「ねえ、律」


「ん?」


「……大好き」


「…………」


……やっばい。なんなのこの子。むちゃくそ可愛いじゃん。なに、「大好き♡」って。義妹が義兄に言うセリフじゃないんだよ。というかひとつの冗談でここまでなる普通?


「照れてるの?」


「断じて照れてない」


「本当は?」


「照れてない」


「実は……?」


「……照れました」


「よろしい」


その一言が聞けて満足気な表情を浮かべ、さらにピットりとくっついてくる。


「今日もおアツいねえ」


「これはある意味一種の事故だぞ?」


いろはがからかうような口調で話しかけてくる。その隣にはいろはの彼女の美咲がいた。


「まぁ、そうだけどさ。見てるこっちとしては嬉しいよね」


そう言って美咲が叶の頭を撫でる。叶はなぜ撫でられたか分からないといったふうに首を傾げた。


「あ、そっか。記憶がないんだっけ。えと、私の名前は赤田美咲。律君の唯一の女友達」


「赤田……さん?」


「美咲でいいよ?記憶無くなっちゃう前の叶ちゃんはそうやって呼んでたからさ」


「じゃあ、美咲さん」


「さん付けには違和感あるけど……まぁ、いいか。よろしくね」


コクリ、と叶が頷く。しかしその直後、俺の顔を見上げてくる。


「律」


「ん?」


なんだろう、なんか不機嫌な気が……。


「私は友達じゃないの?」


「へ?」


「さっき美咲さんが「唯一の女友達」って言ってた。私はなんで入ってないの?」


あーーもうっ!!なんでそんなことで不機嫌になる!?女心って分からねええ!!

と、とにかく何か弁明を……!


「だって、叶ちゃんは「彼女」でしょ?」


俺が慌てた様子を察したのか、ありがたいことにとっさに美咲がフォローに入ってくれた。その言葉を聞いた叶は顔を赤らめて「うん」と答える。その様子に俺はホッと安堵する。


「あれ、叶ちゃんってこんなに可愛かった?」


「記憶を失ってからこんな状態になった」


「あ-そっか。律くんがやらかしたもんね」


「やらかした言うな。ほんのいたずら心だったんだよ本当に」


「でもまあ、結果オーライじゃん?」


いろはがそう言ってヘラヘラする。


別に俺は叶をそんな目で見たことないっての……義理だとしても妹だぞ?そりゃ、異性として全然意識しないって言ったら嘘になるけども……。


「どうしたの?」


目が合うと、叶は不思議そうに俺の目を見つめる。


でも。どうしよう。異性として改めて叶を見ると、無茶苦茶可愛く見える……。


「おいおい、朝からそんな見つめ合うなって」


「普段からイチャイチャしてるお前らだけには言われたくない!」


思わずそう言い返してしまった律であった。




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