第4話 罪ですね
翌朝。
「ん、んん……」
暑い。あれ、まだ春だよな?こんなに昨日の夜は暑かったっけ?そう思って目を開くと。
「おはよ、律」
薄らと色っぽい笑みを浮かべる叶が、目の前にいた。かなり距離が近く、甘い香りが鼻をくすぐる。パジャマは少しはだけておりふくよかな胸元が少しだけ露出している。
「うおわぁぁぁっっ!!??」
あまりの衝撃の光景に意識が覚醒した俺はベッドから飛び起きた。そして同時にベッドから滑り落ちてドンガラガッシャーン。
え?え?待て待てなんで俺の部屋に叶がいるの?なんで一緒に寝てるんだっ!!??
「大丈夫?」
叶は掛け布団からのそのそと出てきて四つん這いで俺をベッドの上から見下ろす。
どうやら俺と一緒に寝ていたことより、俺がベッドから盛大に落ちたことに対して関心があるようだ。
「いやいやいや、なんで叶が俺の部屋にいるっ!?」
「だって恋人でしょ?一緒に住んでるなら一緒に寝るの、当たり前って雑誌に書いてあった」
「どんな雑誌読んだんだよお前はっ!?」
俺はうわぁぁ、と頭を抱える。しかもあの目の前にあった二つの物体が目に焼き付いて離れてくれない。
……というか、待て。今日は4月2日。エイプリールフールは終わってるんだ。
嫌な予感しかしない。
「叶?」
「なに?」
「今日は、4月2日だ」
「うん……?」
「エイプリールフールは、終わってるんだ」
「うん」
しばしの無言タイム。
「え、まさか何も思わないと?」
「うん」
コクリ、と頷く叶。まるでなにがなんだかわかっていない様子である。
「これ、マジなやつやん」
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病院にて。
「あー、これは……」
医者が難しそうな顔をする。
「やっぱり、記憶喪失なんですか」
「はい。ですが、脳に目立った損傷が見られないので、精神的要因による記憶障害かと……」
「精神的要因による記憶障害?」
「何か最近変わった様子はありませんでしたか?」
ここ最近の叶の言動を思い出す。
「あ、なんか冗談言ったら恋人になっちゃって」
「は、はぁ……?」
ってなるに決まってるのでそんなことは言わなかった。
「特には、ないですね」
「そうですか……では、一旦様子を見ましょうか。1ヶ月後、また診察に来てください。その時にもう1度脳の検査をしてみましょう」
「わかりました」
────────────────────
「ということで、本当に記憶喪失だったんだが」
昼休み。俺といろはは昼ごはんを向かい合って食べていた。
「まじ?」
「俺だってまだ信じられないよ、まさか本当に記憶喪失だったなんて」
俺はハァ、とため息をつくとパンにかじりつく。
「確かに、時々突発性の記憶喪失とかになった人を取り上げてるテレビを見たことがあるけど。まさか身近な人にそれが起こると、なかなか信じられないな」
「ほんとにな」
すると、いろははそばによってきて、こんなことを言ってきた。
「でもさ、これはチャンスなのでは?」
「は?」
「今の高山さんは律にベタ惚れだ。今のうちに既成事実作っちゃえば……」
「んな事するわけないだろ、アホかお前は」
頭を軽く引っぱたくと「律くん……酷いわっ、か弱い私を殴るなんて!」と変なノリを発動してきた。
「痛いっ!?今の結構痛かったぞ律さんっ!?」
ちょっとイラついたので蹴りもおまけしておいた。
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