第2話 義妹のアプローチ、開始

「あ、あの……叶?」


「なに?」


「朝ごはん……その、食べずらいから、さ?あの、離れてくれませんかね?」


 叶は俺にピッタリとくっついて、朝ごはんを食べていた。いや、ピッタリどころじゃない。もはやギューっていう部類だ。


「どうして食べずらいと離れなきゃいけないの?」


 普通に食べずらいからですけどっ!?俺は叶の答えにツッコミを入れる。いや、でもさっき俺は確かに言った。


『義妹で……恋人だ』


『それはもうイチャイチャ甘々、周囲のみんなの視線を集めてしまうくらいの……恋人だ』


 言ったけどさぁ……、普通ここまでグイグイくるかっ!?あと、色々当たって余計緊張するんですけども!?


「どうしたの?」


 コトン、と首を傾げる叶。あーもう、今までと距離感違いすぎて感覚狂うわ。こっちは心臓バックバクなんだぞ?しかもこれ以上くっつかれると色々と反応してしまう……だって健全な男子高校生だもの。


 そうなってしまう前に、俺は叶からスス……と距離をとった。だが。


 スス……ピト


「……」


 ススス……


 ススス……ピト


「…………」


 スススス……


 スススス……ピト


 追跡してくるっ!?嘘だろおいっ!?まさかの追跡機能付きですかねぇっ!?


「どうして距離をとるの」


 ムスッとした表情で俺を見つめてくる叶。

 ああもう、無駄に可愛いな!?今までこんな意識したこと無かったのに!


「何となく、恥ずかしいカラデス……」


「恥ずかしいの?」


 そりゃね。そんなにギューってされたらね。


「まぁ……」


「じゃあ、もっとくっつく」


ギュッ


「////*☆¥$%>○€♪☆!!!???」


もはや人間の声ではない声が出た。


「なななななんでそうなるっ!?」


「律の照れてる顔……可愛いから」


叶はそう言って、ニヘラと笑う。


「////もう、好きにしてくれ……」


叶が満足するまで付き合ってやるか……、と思わずため息をついた。


────────────────────


その後、朝食を済ませた俺と叶は学校に向かうため家を出た。学校までは割と近いため徒歩で通学しているのだが、いかんせん今朝の一件で、周りから注目を集めていた。


「なぁ、叶」


「なに?」


「さすがに学校行く時くらいは腕を組むのをやめて欲しい……んですが……」


やはり叶は外でも家の中と同じように俺にピッタリとくっついていた。このまま学校に行ったら色々と面倒臭いことになりそうな予感がする。というか、絶対に面倒臭くなる。


「恥ずかしいの?」


「恥ずかしいとか以前にクラスメイトに見られると面倒臭いことになるからさ……?」


少し困ったようなトーンで話すと、さすがに申し訳なくなったのか大人しく手を離してくれた。


「じゃあ、家に帰ったらまたギュッてしていい……?」


上目遣いでそんな爆弾発言を投下してくる。


「もう好きにしてくれ……」


どうせ今日だけだ。明日にはケロッとしているのだろう。そんなことを考えながら俺は学校に向かった。

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