第四課題 デットコピーガンの高松

 屋島という山のような島から見る高松市はいわゆる「リアル北斗の拳」のような状態に陥っていた。

 サンポート高松シンボルタワーは無残に崩れ落ちて若干ピサの斜塔のように傾いてその上階部分に武装組織「レッドコルテス」のマークが入った旗が翻っていた。

 そしてもう一方のかつての県庁の建物には名前は白なのにブラック企業を中核にした軍事組織「ホワイトグループ」が根城にしていた。

 そして、その中核に国連直轄の司令部になった高松市庁舎が見えた。

 そんな、高松市では銃声や砲声が止んだためしがない。世界各地の曰く付きの銃が四国の玄関口に二束三文で犯罪者崩れなどに流れ自前の武装にしているからだ。

 話を屋島に戻すと、ここはかつて観光の名所は廃屋を使った銃器密造の根城になっていた。ボロホテルや廃寺で最新の3Dプリンターを使い、密造に必要な現物から図面などをスキャンデータ化して大量に部品を配備して組み立てている。

 そんな、高松のクーロン城のような場所で、幹也河東は文字通り世界でも指折りの技術と精度などで神のように扱われていた。

「さて、今日の注文はっと」

幹也は銃の伝票が打ち込まれた紙を確認した。注文内容は人気漫画のM16A2スナイパーモデルと人気ゲームのコルトガバメントを一五ダース分をホワイトグループのアニメサークルに送るという内容だった。

 幹也は注文を確認するとすぐにプラスチック、繊維ガラス、軽金属の各3Dプリンターを起動させて、部品の製作にうつる。

 部品は次々に形成されていき、そこからならば通常人の手で組み立てられるが、そこからが、その部品は自動的に職人以上に正確かつミクロン単位でAIが精査して組み立てていく。

 それを確認した幹也は紙を文字通り燃やして庭で育てているキャベツの肥料に変えた。

 そして、AIによって組み立てられた機械は幹也とAI,二重のチェックが行われて、漫画やアニメと同じ性能があるか確認された。

「よし、今日はまあまあの性能だ」

「こちらも中の下ですね」

 それを確認した幹也ケースに一丁ずつ詰め込んでいき、それを特設のトロッコに載せて、山頂の廃駅に送っていく。

 全ての銃ができた後、彼もトロッコに乗り込んで、廃駅に向かった。廃駅はかつてのケーブルカーを使った輸送手段で、貨物用に作ったハンドメイドのトロッコにブツを乗せて、下にあるトロッコ駅に控えるトラックに乗せていくというのがいつもの運びだった。

「しかし、ケーブルはかなりへばっているな」

 いつも運行している職員はそう言って、積み荷が全て乗るのを待っていた。

「じゃあ、メンテナンスをしたら良いだけだろう」

「そんな暇があればとっくにやっている」

 そう言って、ケーブルカーのレバーとスイッチを押して車両を動かしていった。






概要

 ホワイトグループとレッドコルテスという武装勢力が東西に線引きされ犯罪都市となった高松市。

 そこで、かつて観光地であり、今では銃器密造組織の根城になっている屋島で、アニメや漫画に登場した銃器を3Dプリンターで作り、本物以上の性能と耐久性で世界的な高値で販売する銃器密造の神様、幹也河東は二大勢力に生かして殺さずの商売でうまい儲けをしていた。

 ある日、廃線になったケーブルカーを使って、積み込んだ銃器をホワイトグループに売ろうとしたときに、交換していなかったケーブルが何者かに切断されて、積み込んでいた銃器ごと、ケーブルカーが一気に下って、脱線転覆してしまった。

 大損害を被ったうえ、顔に泥を塗られた幹也は銃器密造からの引退を考え始める。

 そこへ、AI研究者だと名乗る数人の男女から謎の依頼が飛び込んでいた。それは旧帝国が第二次大戦時に製造、試作した銃をコピーしてほしいとのことだった。

幹也はなぜ人工知能の研究者がそのような依頼をするのかいぶかしんだが、めっもくを取り戻せるという欲に駆られて、残っている資料やAIからの推敲された設計図をもとに、様々な銃を3Dプリンターで大量生産する。

 そして、AIによって、様々な人間によって誘導されるがまま、購入させた。それは奇しくも、その日は両武装勢力の暫定和平も兼ねた新型発電所の竣工式と同じ日だった。

 そして、新型太陽光発電所の完成披露式典の日にがめつい欲に駆られた猛犬たちが作り笑いして立っていた。

 幹也はAI科学者のプレゼントされた骨董品の無線機で「日本軍に仮装した人々に次ぐ、発電所を奴らの葬儀場に変えよ」と命じた。

 するとどうだろう、日本軍にコスプレした民間人たちは体内に入れたナノマシンの命じるがままに、大暴れして、あっという間に血の池地獄になってしまった。

 幹也はざまあみたかと思ったが、同時に連中の顔をつぶされたことでやばいことになると考えてしまう。

 しかし、AIがはじき出した計算で、旗を狙撃すれば助かるとの結果が出たため、彼は売れ残りの九七式自動砲でレッドコルテスの旗を撃つと、旗は発電所の機会に巻き込まれた大爆発を起こしてしまった。

 幹也はAIの偶然を装った必然に驚きながら、飼っているマナティーにお土産のキャベツをもって、帰っていった。

 

 アピール

  今回は自分の都市を物語に入れなさいとのことでしたので高松市に未来の源平合戦のオマージュを入れて、それにAIによる人間の誘導や進化した3Dプリンターによるレプリカ銃の密造を入れました。

 なお、屋島は廃止になったケーブルカーや廃墟になったホテルに水族館のマナティーのくだりは現在の屋島の状況を見せたものです。

 かなり自分の街に対する悪意を全開になり、今回はSFから離れているかもしれませんが、何とか絞りました。

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