変なプロポーズ
ぺんなす
第1話
……あいつ遅すぎ。
何して──って電話だ。
「あ、聞こえてる?迷った」
「はぁ?…今、何見える?」
「あー空って言ったら怒るやつだ。アイスクリーム屋」
「はぁ……。すぐ行くから絶対動かないで」
「ん。了」
なんでトイレ行くだけで迷うのよ。まったく…めんどくさい奴…。
「まったく…なんで迷うのよ」
「さぁ、俺が知りたい」
「ていうか、あんたのせいで遅刻しそうなんだけど。もう、早く行くわよ!」
「………。ふっ」
「……っ!なに笑ってるのよ!」
「あー、手握れるようになったんだ。俺の」
「…っ!うるさいわねっ!そのくらいできるわよっ…!もう……早く行くわよ!」
「……それなら──」
「ちょっ、急にお姫様抱っことか…なにすんのよ!!」
「この方が早いでしょ」
彼はそう言って建物の上をぴょんぴょんと跳ねるように移動して行く。気づけば学校に着いていて。
「ほら、早く着いた。遅刻回避」
「それは…そうだけど………」
急にお姫様抱っことか、心臓に悪いじゃない。
「おー、2人ともおはよう」
話しかけてきたのは同級生。
「おは──」
私が挨拶し終わる前に強く手を握られそのまま校舎の中へ。
「んー…やっぱ嫌われちゃったかー」
怖い怖いどうしよう…誰か助けて──。
突然の出来事で頭がパニック状態。
「このままもっと君に触れたら…」
怖くて言葉が出てこない。頭に入ってこない。
どうしよう……。怖い…怖いよ……。
突然呼び出されて行ってみたら押し倒されて──。
誰か────助けて。
そう思った瞬間ドアが開く。
「……あーあ。もう来ちゃったか」
何も言わずにこちらへ向かってくる。そして私の手を握り、
「帰るよ。彩心」
表情はいつもと変わらないけど私の手を握る力はとても強くて、それに彼のことも睨んでた。確実に怒ってる。
「……あの、えっと…彼は何も悪くなくて…その多分、血迷ってやった事っていうかなんて言うか、その……だから、怒らないであげてほしくて………」
手も声も震えてるくせに、あいつのこと庇うとか…優しいとかいい人とかそういうの全部通り越してるでしょ。俺が怒ってるのはあいつのしたこともそうだけど、彩心のこと怖がらせたくせに彩心に守られてるのが1番気に食わない。心の治安、乱れただろ。彩心は…変に優しいから、そこにつけ込んで取り入って気に入られようとするやつは今まで何人も見てきた。全員気に食わない。死んでしまえばいいとさえ思う。
一番気に食わないのは────────俺が出ができないこと、平気でやるな。俺はずっと、言うタイミングも言えばいい言葉も分からないまま生きてきて、それなのに出会ってちょっとの奴らが平然と吐き気がするようなことばっかりして。クソみたいな世界だ。
「……まだ、怒ってるの?」
「……遅刻回避できなくなるでしょ。話してたら」
ウソ。本当は怒ってるの分かってる。だってずっと冷たいから。彼が現れると機嫌が悪いから。私の手を…強く握るから。あなたの気持ちは分かってる。でも、応える勇気がなくてタイミングも言葉も分からなくて。
でも、ずっとこのままはきっとダメだと思うから────。
「………す、好きなら…!ちゃんと言ってほしい。私は、アンタのこと、好き…だから」
いや、急すぎんだろ。彩心まで、俺にできないことするのかよ。まぁ可愛いからいいけど。
ていうか、俺の気持ち気づかれてた。ウケる。
俺、めちゃくちゃかっこ悪いじゃん。
「俺が先に言いたかった言葉、言うなよ。ま、相思相愛両想いなら恋人超えて結婚な」
「…!そっ、それは急すぎるわよ!!ていうか飛ばしすぎよ!!!!もっと…こう、段階みたいなのがあって」
「今更いる?そういうの。今までずっと一緒にいたんだからさ。変更点なんて指輪だけでしょ。だからさ、指輪つけて生活しよ、俺と」
「なにそれ………。変なプロボーズ」
そう言いながら笑う彼女は今まで見た事ないくらい綺麗で、好きが増していくだけだった。
変なプロポーズ ぺんなす @feka
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