盗撮犯VS探偵/体育祭大ピンチ!!

第6話/保健室でペロペロ♡大ピンチ

「よーし、体育祭は絶対に勝つぞー」


月曜日を迎えて、詩音は鳴海に謝って仲直りし、朝から体育祭の練習で木月先生が燃えていた。


「大河! 同じ紅組だな!」

「よかったね!」

「おい! 喋ってないで並べ!」

「き、木月先生、練習初日からそんなに気合い入れなくても」

「桐嶋、お前に分かるか? 日曜日に告白失敗しても、翌日学校に来なきゃいけない乙女で美人な先生の気持ちが」

「分かります!!」

「なんだと」

「俺も最近失恋しました!!」

「よし、今日から一週間、私の授業で居眠りを許す」

「ありがとうございます!!」

「木月先生って面白い先生だね」

「怖いけど、怒る時は的を得てるから、俺は好きかな」


そもそも、木月先生も恋とかするんだ。ちょっとギャップ萌えかも。


「桐嶋さん。桐嶋さんは熟女好きなんですか?」

「バカ!! 聞こえるぞ!!」


急に話しかけてきたと思ったら、詩音は命知らずなのか!?


「桜羽」

「はい」

「来い」

「はい」


詩音が木月先生の目の前に立つと、木月先生は右手をピースにして見せた。


「これ何本だ?」

「二本です」

「そう、私はまだ二十代だっ!!!!」

「うひぃ!」


そのまま二本の指を鼻の穴に突っ込まれた詩音は変な声を出してしまい、みんなに笑われて顔を真っ赤にしながら俺の後ろに隠れてしまった。


「バーカ」

「す、すみません。あの教師に二穴の初めてを奪われました」

「そ、そうか」

「広がってないか見てください」

「大丈夫。綺麗な鼻だ」

「絶対にいつか痛い目に遭わせます。大事な桐嶋さん専用の穴を汚して、許せません」

「本当に鼻の穴はマジで興味ないから落ち着け」

「分かりました」


なにかとサラッと下ネタ入れてくる癖はどうにかならないのか‥‥‥。

 それから、全員の二百メートルのタイム測定が始まり、詩音は以外にも陸上部レベルの足の速さを見せつけた。


「凄いよ詩音ちゃん!」

「陸上部入らない?」

「結構です」

「えー、勿体なーい」


でも、予想通り大河は遅いな。


「桐嶋! 早く位置につけ!」

「はい!」


俺も別に速くはないけど、タイム測定だし全力で走ろう。


「位置について、用意‥‥‥」


ピストルの音と同時に走り出すと、コース外で詩音が並走してきた。


「なにしてんの!?」

「頑張れっ♡ 頑張れっ♡」

「恥ずかしいからやめて!? っ! うおぁ!」

「危ない!」


詩音に気を取られたせいで脚が絡まり、派手に転んでしまったが、詩音が俺の下敷きになって俺を守ってくれた。


「バカ! 怪我してないか!?」

「あぁんもう♡ 桐嶋さんのせいで腰いたーい♡」

「意味深なのやめろ!!」

「激しすぎて血が♡」

「ド派手に転んでごめんね!?」

「お前ら大丈夫か」


木月先生が心配して駆け寄ってくると、詩音はすぐに俺の背後に隠れてしまった。完全に木月先生を危険生物かなんかだと思ってるな。


「詩音が怪我をしたので、保健室に連れて行きます」

「分かった。戻ってきたらやり直しだ」

「分かりました」


すぐに詩音を連れて保健室にやって来ると、保健室の先生が丁度保健室を出るところだった。


「怪我?」

「はい」

「ごめんね、私今から遅れちゃダメな会議なの。輝矢くんが手当てしてくれる?」

「了解です。入れ」

「失礼します」


詩音を椅子に座らせて、擦り剥いた膝ををウェットティッシュで濡らそうとすると、詩音は露骨に怯えた表情をして立ち上がった。


「そのうち治ります」

「洗って消毒しないと、変な菌とか入ってたらヤバいぞ」

「でしたら提案があります」

「なんだ?」

「人は痛みを緩和したり、その痛みを快楽に変える方法として、気持ちいいことをしながら痛いことをするというのがあります」

「却下」

「そんなに嫌なことではありません。ただ、私と桐嶋さんが繋がりながら消毒すればいいのです。ベッドもありますし」

「だから却下したんだよ!!」

「でしたらせめて、キスさせてください」

「無理無理!!」

「指でいいです。何かに集中しないと、私、痛いの苦手なので。指にキスする許可をください」

「嫌に決まってるだろ」

「先っちょだけでいいですからぁ♡」

「‥‥‥はぁ‥‥‥ゆ、指にキスしたら、消毒できるんだな?」

「はい♡」


俺は静かに手を洗い、無言で指を差し出した。


「いただきます♡」

「おーい! 咥えんな!」

「早く消毒してくらしゃい♡」

「舐めるな!!」

「今、私達繋がってますぅ♡」


指を咥えられながら舐められる初めての感覚に、体がゾクゾクしながらも、急いで傷口を消毒しようと手を伸ばすと、詩音はまた立ち上がって消毒を拒んだ。


「おい!!」

「これが私のファーストキスです♡ それではグラウンドに戻りましょう♡」

「しょ、消毒は!?」

「本当に平気です! 先に行きますね」


本当に行っちゃったよ。

 

「はぁ‥‥‥」


ファーストキスという言葉に、俺の心は騒ついた。でも、これがなんのざわつきなのか理解できない。とにかく、俺も戻らないと。

 保健室を出て廊下を歩いていると、膝を押さえて座っている詩音を見つけて、目の前で立ち止まった。


「ヒリヒリするんだろ」

「て、輝矢さっ、桐嶋さん」

「消毒しないからだぞ」

「もう痛くはないのですが、寝不足で」

「またかよ。多分今日の夕方にベッドが届くから、それ使えば少しはマシになるだろ」

「だと良いのですが」

「それに、体の疲れに良い入浴剤も一緒に注文しといたからな」

「ありがとうございます。それともう一つ、大事なお話が」

「言ってみ」

「保健室での行為」

「別に謝らなくていいからな」

「誰かに撮られました」

「‥‥‥ん!?」

「だから私は保健室を出たんです。追いかけましたが見失って、廊下にこれが落ちていました」

「手紙?」


花柄の手紙らしきものを開くと、そこにはとんでもないことが書かれていた。


「体育祭当日に写真をばら撒く‥‥‥ばら撒かれたくなければ、私を捕まえてみろ‥‥‥」

「私が居ながら、こんな!!」

「怒っても仕方ない」

「私が桐嶋さんのをペロペロしている写真をばら撒かれでもしたら‥‥‥」

「ヤバいよな」

「体育倉庫に呼び出されて、俺のも舐めろって、男子生徒に囲まれてしまいます‥‥‥」

「なに考えてんの!? とにかく命令だ。犯人を捕まえてくれ」

「はい」

「姿は見たのか?」

「制服をチラッとです。女子生徒でした」

「分かった。俺もなにか気づいたらすぐに言う」

「分かりました」


でも、ばら撒いて、なんの特があるんだ?全然分からないな。





その日は犯人の手かがりも掴めず、体育祭の練習でヘトヘトになりながら詩音と一緒に帰ってきた。


「そういえば、今日は一緒に帰ってきたな」

「しばらくは一緒に登下校します。犯人が危険な人物だったら困るので」

「にしても困った! ばら撒かれたく人生詰む! 鳴海はもうあれだとして、みんなに冷たい目で見られて、新しい恋が出来なくなる!!」

「なるほど」

「なにがなるほどだよ」

「ちなみに、トイレ休憩の時間に大河さんと話をしました」

「へー、なにを話したんだ?」

「今回の件、協力してくれたら、輝矢様の右乳首だけ吸わせてあげますと」

「気持ち悪りぃな!!」

「笑顔で断られました」

「当たり前だ」

「ですが、有力な情報を手に入れました」

「はいはい、どうせまたくだらないことだろ」

「私達の学校、霧坂きりさか高校には、先生にも秘密の極秘探偵クラブがあると」

「なにそれ凄そう!!」

「探偵は放課後、一階の技術室に居るそうです」

「なら、明日行ってみるか」

「はい」


その時、家のインターホンが鳴り、詩音は笑顔で玄関に向かった。


「ベッドだー! わーい!」


子供かよ。

 だが、詩音はすぐに戻ってきて、真剣な表情をしていた。


「犯人からの手紙です」

「はぁ!? 家まで来たのか!?」

「玄関前に置かれていました。読みます『とりあえず明日、誰かの机に一枚写真を入れる』だそうです」

「‥‥‥明日、朝一で学校に行く!!」

「朝一で学校でイく? 下ネタはやめてください。今は真剣な時間です」

「お前だよ!!!!」


そういえば、いろいろありすぎてお子様ランチ食べに連れていくの忘れてたな。お子様ランチは、この件が無事に解決したら、ご褒美で連れて行くか。

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