第5話 流れて行くよ 行っちゃうよ
篠突く雨のなか私は走りだす。
みんな躊躇してるのが面白い。
白い目かぁ? いや~目を白黒させているんだよ。
あの子少し頭が……いってる?
良いじゃん。
良いじゃん。
気持ち良いんだから!
流れてしまえよ。
流れて、流れてしまえよ。
ずぶ濡れの体は重たいけど
さっきまで笑えなかった心は
なんて軽やかなんだ。
アハハアハハ
うん? 歌ってる? ぐちょぐちょと叫ぶスニーカーは大喜びかぁ。
傘?あげたよ。
濡れたなくないって
困り顔したあいつにさ。
好きなようにするさ。
今日のこの一瞬は、二度来ないから。
痛み?涙?孤独?
それがどうした。
笑顔?喜び?仲間?
それがどうした。
生きていく事は
垢を溜め込んで
身動き取れないって
大袈裟に叫んだり、蹲ったり
悲喜劇の舞台に立っているんだよ。
喜びに浸っていても、どこかで
良いのか? 本当これで良いのかなんて心が彷徨い始めるんだから。
なんて厄介なんだろう。
心ってやつはさ。
だからさ、悲しみにのたうち回っていても、喜びに狂喜乱舞為てようが、進め進め進め。
新しい景色はそうして見えてくるんだろう……
ああ~ああ~来た!
傘を左右に揺らしながら
あいつが来た。
怖がりのあいつ。
「ふざけるなよ! 幾ら夏だからって風邪ひくぞ! もう~ぐちょぐちょだぞ!」
「あ~あ~あ~あ~あ!」
叫んでやる!
気持ち良い!!
足掻け。
立ち止まれ。
そして歩け。
たまに走れ。
良いんじゃない……それで
私の時間
あなたの時間は
等しく流れていくんだから。
生きてるって凄いね。
本当凄いね!
もう……あの人との時間は止まったままなんだ……
おお~おお~
流れる流れる時の中を、ぐちゃぐちゃなになって行こうじゃないか!
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