第一章 ハル

わたしは暗闇の中にいる。

この世に生まれた時からずっと…。


幼い頃に読んでもらった絵本に出てきた太陽は、どんな色をしているんだろう?

月はどんな色?空の色は?海の色は?


わたしを大切に育ててくれたお母さんはどんな顔?

お父さんの顔は?


わたしの顔は…?


わたしは何のために生まれてきたんだろう。

何もできない、何の価値もない…。

きっと、わたしは何も知ることのないまま、この暗闇の中で生涯を終えるのだろう。


『もしも1つだけ願いが叶うのなら…』


最近、よくそんな風に思ってしまう。それは、あの人に出逢ってからだ。


願いが叶うなんてことあるわけないってわかってるのに、何回打ち消しても消えることなく浮かんでくる…。


『もしも…もしも願いが叶うのなら…』


「そんなの…叶うわけないじゃない…」


いつものように祈る自分を叱責した次の瞬間、真っ暗な暗闇の中に、一筋の小さな光のようなものが見えた。


「えっ!?何っ!??」


わたしは、徐々に大きくなる光に包まれ、気付いたら知らないところにいた。


「えっ!?わたし…見えてる…!!?」


何が起きたのかわからず周りを見渡していると、突然、側にあったスマホのアラームが鳴った。


スマホを手に取ろうとすると、見えていたものが次第にぼやけ始め、だんだんと景色が遠退いて、また再び元の暗闇に包まれた。

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