第4章 神の思惑(1)
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「――つまり、遅かれ早かれ、聖竜と対峙する日がやってくるということであるか?」
カールス王は頭を抱えて
「いえ、そうと決まったわけではありませぬ。一つの可能性を申し上げたまでです。現時点において、四聖竜と人類がもし争うようなことになれば、間違いなく人類は滅びます。彼らにとって人類など特に必要のないものなのですから。彼らにとって必要なのは、素粒子を育む大地であって、その上に存在する生命体などなんであろうとよいのです。素粒子を損なわず常に生み出してくれさえすれば、彼らの欲求は満たされるのですから――」
リチャードはそう言っておいて、
「されど、人類はそうはいきませぬ。出来得るならば彼らと共生していきたいと願うでしょう。
そう言って、リチャードはしばらく間をおく。人族の考えというものを聞いてみたいと思ったのだ。
「ぬう……。全く先生の言うとおりでありますな。ぐうの
キリングは感心しきりに
「四聖竜に審判を願うというのは……、いや、ダメだろうな……、彼らにとって人類同士の善悪や大義などどうでもよいこと、むしろ争い合って滅んでくれる方が望ましいと考えるか――」
ゲラートも眉間にしわを寄せる。
「これは仮の話だが――」
フューリアスはそこまで言って、言い淀んだ。口にしてよいものかどうか悩んでる様子だ。
「フューリアス将軍、恐らく私と同じことを考えておられるのでしょうな。是非、人族であるあなたからその意見をお聞きいたしたい。我らエルフ族は寿命があなたがた人族の3倍から5倍ほど長い。人族はその寿命が100年に満たない種族です。その分、野望や思想に忠実で、物事や生命に対する執着が強い。しかしながら、その短命がゆえに、想いをなすには数世代を必要とすることすらある。それでも事を成す為には、強い信念を受け継いでゆくしか方法はない。我ら長命の種族よりも気概にあふれておられるのはそれが
リチャードはそう言って、
「私は今この時間にあなたがたがここで話した内容を、あなた方の子孫へと伝えることができるものです。生きておれば必ずその意思をお伝えできるものと確信しております。むしろ、われわれ長寿の種族の役割というのは、まさにそれであるように私は思うようになりました」
そう、フューリアスの言を促すのであった。
「――なれば、言わせてもらうが、これはあくまでも現段階では不可能なことだが、いつの時代かそれが可能になったなら――。人類が生き延びる方法は一つしかないと考えます」
フューリアスはそこで息を大きく吸った。そしてゆっくりと吐き出すと、
「四聖竜の排除――」
そう一言、言い放った。
一同は目を丸くした――。
キリング将軍などはその双眸を大きく見開き、口はあんぐりと大きな穴をあけたまま固まっている。
さすがのゲラートも、一瞬言葉を失って固まっていたが、さすがにそこは執政を任じられるほどの男である、一瞬ののち、
「それは――、思いもしなかった……が、それは大いに考えねばならぬことだったのだ……。今までどうしてそれを考えなかったのかと、不思議に思うが至極当たり前のことに他ならない結論であると言える――」
と言った
リチャードは今日初めて満足そうな笑みを見せているようだった。
「さすが、常勝将軍フューリアス・ネイ殿でありますな。私もそれを考えておりました。ですが、この話はここまでといたしましょう。どこからこのような会話が漏れ出るか分かったものではありませぬ。今は、ここまででよいと思います。その意思を引き継いでいきさえすれば、やがて時が来ればいつか成就される日が来るやもしれませぬ」
そう言った後、今回の会議の本筋に戻した。
「さて、では今はどうするべきか――。私はゲインズカーリの横暴を放っておくのはやはりよろしくないと思います。これに対しては断固として異議を申し立て、場合によっては、王室もしくはその国を滅ぼしてでもその横暴は止めねばなりませぬ。幸い、現時点においては、メイシュトリンドの戦力は他国を圧倒しております。戦闘となれば、戦力の消耗もゼロとはいかないでしょうが、それほど甚大なものにはなりますまい――。とすれば、後方より圧力をかけ、戦端を開かぬよう交渉をするというのがまずは先決かと思います。その後、ゲインズカーリの王及び、女王と会談を持てれば、何か方策が見つかるやもしれませぬな」
「わかった――。即刻、キリング将軍は兵5000を率いて、国境に向かって進軍を開始せよ。同時にフューリアス将軍とゲラートはゲインズカーリへ使者として向かってくれ。とりあえず交渉の余地があるか探ってみよう。その上で、次の方策を考えるとしようではないか」
カールス王は決断すれば疾風のごとき行動力である。
即座に命令を下し、一同に言い渡した。
「は。かしこまりました陛下。では早急にゲインズカーリへ向かうとします――」
ゲラートは二つ返事で即答した。
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