第14話 解放者の企み
暁至町に戻ろうとしていたが、暗くなってきたのだ。
「今日はこの辺で野営にしようか」
『いいねぇ! 野営! 野営!』
楽しそうにテンションが上がってる蘇芳。
焚き火台を用意する。
その辺に落ちている落ち葉と枝を積む。
「これで火をつける」
カチッと魔道具で火をつける。
すぐに燃え始め当たりを明るくする。
「蘇芳! おめでとうございます弁当出して!」
『はーい! 僕とんかつ弁当! 翔真には、焼肉弁当!』
「サンキュー!」
火の近くに置いて温める。
パクッとひと口食べると口に肉の旨みが広がりタレの味が肉の味とマッチして芳醇な味を醸し出している。
「うぅぅめぇぇぇ!」
『美味しいぃぃ!』
「最っ高だなぁ!」
食べ終わるとテントを出す。
テントの箱をパカッと開くと目の前にテントが飛び出てきた。
「おぉー! すげぇ! 中入ってみようぜ!」
中に入るとアパートのリビングぐらい。
10畳くらいだろうか。
広い空間にベッドが2つ並んでいる。
「広っ! 蘇芳! すげぇよ!?」
『わぁぁーー! ホントだぁ! これ、宿いらないね!』
「だな! これで十分だわ。あっ!こっちにシャワールームとトイレと洗面のユニットがあるわ」
『至れり尽くせりだね』
「すげぇな? よしっ! 寝よぉー!」
バフッとベッドに飛び込む。
「あぁーーー。気持ちぃぃぃー」
『翔真? シャワー浴びてから寝なよ?』
「ぐぅぅぅぅぅ……ぐぅぅぅぅ」
『寝ちゃったの!? はやっ!』
それを見て蘇芳も寝てしまうのであった。
◇◆◇
「ふぁぁぁーーーー」
身体を伸ばして解す。
「よく寝たわぁーーーー」
隣を見ると蘇芳が寝ている。
まじまじと見る。
コイツ、何処で息してんだ?
っていうか息するのか?
何処で息してんだ?
息づかいが聞こえるくらい近くまで近づく。
『何?』
「うおあぁぁぁぁ! びっくりしたぁぁ!」
『ビックリしたのはこっちだよ。目を覚ましたらメッチャ近くに翔真の顔があるんだもん』
「すまんすまん。何処で息してんのか気になってな」
『息? してないよ? 魔物だよ? 僕』
「そうなん!? 息してないん!?」
『なんでいきなり西の言葉になってんの!?』
「いやー。ビックリして……」
『核はあるけど肺とかないし』
「そうなんか。喋るのとかは?」
『僕の言葉分かるの翔真だけだよ? 放出する音は聞いてるのと違うと思うけど?』
「はっ! テレパシー的な!?」
『かもね』
「うぅわっ! マジかよ!? すげぇ!」
『まぁ、落ち着いて? シャワー浴びよう? 昨日浴びてないでしょ?』
「そうだった!」
いそいそとシャワーを浴びる。
上がると着替える。
その間に朝ごはんを出してくれていた。
「おぉ! サンキュー! サンドイッチ?」
『そっ! 買った中にあったから』
「いいね!」
ムシャムシャと朝食を食べ、準備をする。
テントから出ると、テントの箱を出して開くとシュルンッと箱の中にテントが入った。
「おぉー。流石高かっただけある。楽だ」
機嫌よく町に向かう。
「ぉはざまーす!」
門番の人に挨拶をして入る。
ギルドに付くと、早い時間だからかあまり人はいなかった。
「ぉはざまーす!」
「おはようございます! 早いですね?」
昨日説教された風香さんである。
「あっ、昨日ダンジョンを2個攻略したんですけど、これ、ダンジョンコアです。それ以外は収穫なかったです」
「はい! お疲れ様でした!……これはどちらも小規模ダンジョンですね。こっちの小さい方は5万円でもう一個は10万円です!」
「あっ、はぁーい」
「一気に2個も攻略するなんて凄いですね!?」
「いやー、そんな事ないっす。まだEランクですし……」
「あっ。すみません。昨日は私が言い過ぎてしまって……悪い癖なんですよね」
ポカッと頭を拳で小突く風香さん。
ちょっと可愛いと思ってしまった。
そういうロリ巨乳不思議ちゃん属性か!?
属性が渋滞してるな。
「いえ……事実ですし。何にも知らなかったので。あっ、それでこのコアでランクアップまではどのくらいですか?」
「えぇーと、まだランクアップしてから小規模ダンジョンコアを2つなので、あと小規模13個か、中規模5個ですね!」
「先は長いですね……」
「そうですね。でも、登録日から考えるとEランクなのも驚きですよ?」
「そうっすかねぇ。どうしよっかなぁ。勢いで出てきたけど、1回戻ろうかな……」
「ん? 真仲さんって何処から来たんですか?」
「あぁ、隣の領から大規模ダンジョンがあるってんで、見に来てみたんです」
「そうだったんですね! どうりで見ない顔だと思いましたよ! 目立つ魔物も連れてるし、テイマーですよね? 最弱と言われる」
「はははっ! はっきり言うね。そうだよ。最弱の職業と言われたテイマーさ。俺にとっては最高の職業だったんですけどね!」
そんな話をしていると、横から男が入ってきた。
「おめぇ、よそもんの癖に風香ちゃん独り占めしてんじゃねぇぞ!?」
「あぁ。悪い悪い。換金も終わったんでどうぞ?」
横から入ってきた男がイチャモンを付けてきた。
「お前、この辺の小規模ダンジョン攻略したのか?」
「あぁ。そうだ」
「余計なことすんなよ! 中規模になるように手をつけないで育ててたのによ」
発見されているダンジョンのコアを大きくするために暗黙の了解で攻略していなかったのだそうだ。
「昨日来た時に言ってくれれば分かったんですけど? 昨日隣の酒場にいましたよね? なんでずっと見てたんです?」
「う、うるせぇ! よそ者が!」
ダンッとカウンターを叩く。
「このギルドは金儲けのために小規模ダンジョンを放置することを容認しているんですか?」
風香さんを見てみるとオロオロしている。
「風香さん、このことを知っていましたか?」
「し、知りませんでした!」
「では、解放者達が独断で行っていたんですねぇ。風香さん、上の方を呼んで貰えますか?」
「はい! 直ぐに!」
奥の方へ消えていく風香さん。
「お前なんなんだよ! この町に来たと思ったらイチャモンつけやがって!」
「で? 言いたいのはそれだけですか? この町の解放者、皆でグルだったんですか? ダンジョンを育てるなんて、解放者失格では?」
「うるせえ! コノヤロー!」
大柄な男は背中に担いでいた斧を上段に構えた。
「キャーーー!」
「お、おい。誰か止めろって!」
「あれはまずい」
他の受付嬢や解放者の悲鳴や焦りの声が聞こえる。
振り下ろされる。
斧が目前に迫る。
皆これから起こる惨劇を脳裏に浮かべながら、目をつぶった。
ズンッッッ
振り下ろした衝撃が身体に伝わってくる。
「な、何もんだお前……」
その声に恐る恐る目を開くと。
大柄な男の斧を片手で受け止めていたのだ。
「何者って言われても……ただのテイマーだけど?」
「テイマーだと!? あの最弱のか!? そんな訳ねぇ」
斧を引こうとするがビクともしない。
「おい! 俺の斧離せ!」
「ん? あぁ」
パッと離すと反動で後ろに倒れる。
「ば、化け物!」
逃げようと後ろを振り返ると。
腕組みをした更なる大男に出口を塞がれていた。
「お前はもう終わりだ。同業者を殺そうとしただけではなく、ダンジョンを放置して育ててただと? 詳しく話を聞かせてもらおうか?」
「お、俺が言い出したことじゃねぇよ!?」
無理矢理連行される男。
「真仲さん! だ、大丈夫でしたか!?」
「えぇ。俺は大丈夫っす! しかし、このギルドの解放者達、どうなっちゃうんでしょうねぇ」
「本部には報告されると思います。誰が主犯かは分かりませんが……」
「誰かに唆されたんですかねぇ」
「あの、この前はすみませんでした。弱いみたいな事言って」
「ううん。だってランクは低いからしょうがないですよ。1回戻ろうかな……」
「あの! 解放者が大量処罰されるかもしれないんです! 落ち着くまで周辺のダンジョン、攻略してくれませんか!?」
「そうっすねぇ。ランクも上げたいしそれでもいいかな。あっ、今日のコア小さい方1つは貰います」
「ホントですか!? ありがとうございます! コアは小さい方お返しします!」
勢いよく深々と例をして勢いよく頭をあげる風香さん。
バインッバインッと跳ねる山を見ないようにするのに必死だった。
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