第15話 予想的中

 まだ朝早かったので、ダンジョンの情報を得ようと風香さんに詳しく聞いていたのだ。


「風香さん、この辺のダンジョンの攻略の報告ってあります?」


 マップの北側を指さす。

 今いるのは暁至領の真ん中の当たり。


 北は別の町があるようだが、ギルドはないそうだ。


「んー。無いですねぇ。ダンジョンが無いんじゃないですか?」


「そうだといいっすねぇ。南とかはあります?」


「いえ。ないです。この町の周辺しか報告は無いです!」


「そうですか。わかりました! ちょっと行ってきます!」


「えっ!? 今からですか?」


「はい! 様子見してきます!」


「気をつけてね?」


 カウンターの奥から身を乗り出して見上げてくる。

 その姿勢と上目遣いにキュンと来てしまう。


「い、行ってきます!」


 ギルドを出ると北側に向かう。


 蘇芳と走って北へ向かう。


「マップ!」


 町から20キロ離れた辺りに来た。

 すると、北側に5個も赤い点が出た。


「蘇芳、これは大仕事だな」


『やっぱりアイツらサボってたんだね』


「あぁ。確定だな。でも、こりゃ骨が折れそうだ」


『取り敢えず片っ端から片付ける?』


「いや、1個潜って中規模くらいならいいが、大規模ダンジョンになってたら磐当領に応援要請だ」


『そうだね』


 まず1個目の近場に潜る。

 地上には扉があった。

 開けて中に入ると、壁が光って明るい。


「なぁ、小規模ダンジョンをって暗かったよな?」


『ん? 全部とは言えないけど、確かに暗い所が多かったかも……』


「これ、明るくねぇか?」


『まぁ、明るいね』


「太刀ちょうだい」


『あいよ』


 太刀を受け取ると構えて進む。

 

「ゲゲゲッ」


ズシュッ


 出てきたゴブリンを最小限で倒す。

 そのまま奥に進む。

 分岐点があったが、全て左に進む。

 

 行き止まりに来た。

 今回は左手を壁につきながら進む。


「めんどくせぇから、この戦法で行くわぁ」


 原始的な方法で階段を探すことにした。

 出てきたゴブリンは片っ端から一撃で倒す。

 7つめくらいの行き止まりの後に階段を発見した。


「よっしゃ! 下りるぞぉ!」


 気合を入れておりる。


 また同じような階層に出た。

 取り敢えず同じように行く。


 この戦法で10層まで来た時。

 確信した。


「なぁ、これ中規模の中でも深そうじゃねぇか?」


『そうだねぇ。2、3日かかるかもねぇ』


 そんな話をしながら14層。


「今日はここで一旦休憩にしよう」


 テントを張り、残してたダンジョンコアを埋め込んで結界を張る。


「このテントいいねぇ。キッチンも出そう」


 キッチンの入っている箱をだす。

 パカッと開けるとビュッとキッチンセットが出てきた。


「蘇芳、今日は料理しようか」


『おぉー!』


 野菜と肉をだす。

 切り分けるとフライパンに入れる。


 円盤が熱くなる魔道具で炒める。

 ジュージューといい匂いがして来ている。


 塩と香辛料を振りかけ味を整える。


「おにぎりあったよな?」


『うんあるよぉー』


 蘇芳は異空間からおにぎりを出して手渡してくる。


「サンキュー。よしっ! 食おう!」


『「いただきます!」』


 パクッと食べる。


「うまっ! やっぱ温かいものはいいなぁ」


『だねっ! すっごく美味しい!』


 あっという間に食べてしまった2人。

 その日はシャワーを浴びて寝たのであった。


◇◆◇


 次の日


「んあぁぁぁぁーーーー!」


『うるさいよ! 翔真!』


「よく寝たぜ! おはよ! 蘇芳!」


『まったく。おはよ』


 適当にサンドイッチを食べて着替える。

 テントを出るとしまって準備をする。


「蘇芳、太刀ちょうだい」


『はい。疲れたら代わるよ?』


「そんときは頼む」


『オッケー!』


 太刀を構えて進む。


「おら行くぞー!」


 走り出す。

 次次ゴブリンを倒す。


 20層超えたあたりでホブゴブリンになった。

 すごい大きくなり、知恵が着いたようで連携を取り始めた。


「うらぁぁ!」


 一体を切り伏せると続いて後ろから襲いかかってきた。


ガッ!


 一旦太刀で受け止める。

 少しズラして。


ズシャァァ!


 切り伏せる。


「 まだまだぁぁぁぁ!」


 ホブゴブリンをなぎ倒していく。


 次が30層になる。


 階段を降りると大きな扉があった。


「なぁ、これってもしかして……」


『あぁーー。ガーディアンはゴブリンキングかな?』


「なんかそれっぽいよなぁ」


 なぜそう思ったかと言うと、ゴブリンキングを思わせる彫刻が扉に施されていたからだ。


「開けるぞ」


ギギギィィィィ


 扉を開けた先には、蘇芳と同じくらいだろうか3メートル程の巨大なゴブリンが佇んでいた。


「グゴォォォォ!」


 ドスッドスッと大きなメイスを構えて襲ってきた。


 スピードはおせぇ。

 懐に潜り込んで決める。


 ゴブリンキングがメイスを大きく振り下ろしてくる。

 余裕を持って避ける。


ズドォォォォンッッッ


 メイスを振り下ろした状態で止まる。


 チャンス!


 懐に潜り込み。

 袈裟斬りを放つ。


ギィィィィンッッ


 一旦離れる。

 纏っている鎧は硬いようで、弾かれてしまった。


「さすがに正面切りつけてもダメージはないか……」


『翔真! 首を狙うしかないよ!』


「りょーかい!」


 再びメイスを振り上げて襲ってくるゴブリンキング。


 様子を見て先程と同じ隙を狙おうと構えていると、振り下ろしてきた。


 今だっ!


ブゥゥゥンッ


 メイスが迫ってきた。


 コイツ!

 叩きつけると思ったら今度は横にスイングしてきやがった!

 くっそ!


 咄嗟にメイスと身体の間に太刀を割り込ませ、衝撃を緩和する。


ドスッ


「グッ!」


 数メートル吹き飛ばされる。


 何とか体勢を立て直す。


「やられたぜぇ」


 バカだと思ったらそうでもねぇ。

 ちゃんと頭使ってきやがる。


『翔真!? 大丈夫!?』


「あぁ! 大した事ねぇ!」


 ちゃんと動きを見極めねぇとな。

 今度はこちらからゴブリンキングに迫る。


 メイスを振り下ろす先をみる。

 紙一重で避け。


「おりゃぁぁぁ」


ズバァァ


 片足を切りつける。


「グオォォォ」


 ゴブリンキングが痛みでもがいている。


 太刀を引き絞り、腰を落として力を溜める。


 ゴブリンキングが片膝をついた。


ドンッ


 全速力で首を狙う。

 一瞬でゴブリンキングに肉薄する。


「おおぉぉぉぉ!」


スパァァァァンッッッ


 ゴブリンキングの首に線ができ。

 スーッと頭が落ちてくる。


ドサッ


「ふぅぅぅぅ。なんとか勝てた」


『凄いじゃん! ゴブリンキングって結構強いんだよ?』


――――――――――――

レベルアップ確認

ステータスが上昇します。

――――――――――――


「おぉ! レベルが上がった」


 ステータスを見るとまた1割ほど上昇している。


『翔真、さっきの最後の一閃は技っぽかったね』


「そうか?」


『魔力を身体とか武器に乗せれると更に強いんだけどね』


「何時だか蘇芳が戦った時に出した技もそうだろ?」


『そうだね。翔真ならすぐできるよ』


「そうか?」


 そんな話をしながら奥に行く。

 ボーリングの玉より一回り大きいくらいのコアであった。


「やっぱ、結構でかかったな」


『そうだね。予想通り』


「持ち帰って報告だな」


『応援呼ぶかな?』


「この領にも解放者はいる。皆でやればダンジョンを減らせるだろうけど……実力が分かんねぇからな」


『死なれても困るし』


「そうなんだよな。まぁ、風香さんに相談しよう」


 2人は急いでギルドに戻るのであった。

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