第5話 出る杭は打たれる

「おぉーい! すおーー! 早く来いってぇー! お前来ないと鉱石換金できないじゃん!」


『あっ。そうだった』


 後を追って走る蘇芳。

 少し本気を出せばあっという間に距離が縮まる。


 しばらく走ると森丘町が見えてきた。


 一目散にギルドに向かう。


バタンッ


「はぁ、はぁ。樋口さん! 帰ってきました!」


「あら? 翔真くん。今日はダンジョンはやめにしたの?」


「えっ? 1つ攻略してきましたよ? はい、これ! ダンジョンコアです!」


 カウンターにゴトンッと置く。

 直後、ギルドがザワついた。


「あの大きさ……」


「ねぇ、あれって中規模……」


「デカイな……」


 周りの解放者達が騒がしくなっていた。

 

 樋口さんが慌てている。


「ねぇ、翔真くん? これって、何階層まであったダンジョン? 中規模のコアのようだけど、流石に朝出て夕方に戻ってくるのは無理があるような……」


「これは、3階層までのダンジョンでしたよ? だからすぐ戻ってこれたんです!」


「ウ、ウソッ!? 3階層だったらこんな大きさでは…………!? もしかして、南に行った森にあるダンジョン?」


「あぁー! そうですそうです!」


 更にザワつく。


「あそこって、1層から……」


「そんな簡単に……」


「信じられな……」


 頭を抱えている樋口さん。


「あのー。何かまずかったですか?」


「いいえ! 何もまずくないわ! むしろ、凄すぎるのよ!」


「すご……すぎる?」


「えぇ。あそこのダンジョンは1層から巨大な大蛇が襲ってくる為に2層に行けた人がいなかったのよ」


「えぇ!? あれはデカいだけでしたよ?」


「翔真くん。そんな言葉を聞く日が来るなんて思ってなかったわ……凄くなってしまったのね。寂しいわ」


「そんなこと……」


「あぁ。あんなに雑用を頑張ってやってくれていた翔真くんは何処へ言ってしまったの? 神様、どうしてこんな事をしてしまうんですか? 翔真くんが可愛くなくなってしまいます…………ブツブツ」


「あのー! 鉱石もあるんですよ! 換金お願いします! 蘇芳、出してくれ」


『はーい』


ガラガラガラガラッ


「…………………………えっ? これ、ダンジョンでとってきたの?」


「はい! 換金お願いします! いくらになりますかね?」


「ちょっと待ってね! 今仕分けるから」


「あっ! おれ手伝います! すみません!」


 ちゃんと取った鉱石を見てなかったが、種類が結構あるようだ。


 仕分けを手伝いながら、思う。

 これ、結構いい鉱石が取れてないか?


 アダマンタイト


 ミスリル


 ヒヒイロカネ


「樋口さん? これって……」


 樋口さん、固まってた。


「あのー。これって結構珍しくないですか?」


「翔真くん! これ凄いわよ! 一級の鉱石ばかりだわ!」


「あっ。ですよね? あっ、ちなみに、ダンジョンコアってどのくらいになります?」


「ちょっと待ってね……今計算するわね」


 これって結構な額にならねぇか?


 今までバイトしていた翔真には貴重な鉱石を仕分けたりもしていた。

 その為、どれが貴重か分かるのだ。


「内訳を言った方がいいわよね?」


「あっ、そうですね。俺、あんま分かんないんで」


「分かったわ。まず、ダンジョンコア、これは中規模のコアだったのよ……500万ね……それで」


「えっ!? ちょっ! えっ!?」


「ん? 値段に不満だった?」


「いや、そんなに貰えるんですか!?」


「この位のダンジョンコアって需要が凄くあって、売る時の相場は3割増しよ?」


「そうなんすか!?」


「そう。だから、この額で買い取るのは適正よ。後は鉱石ね、アダマンタイトが15キロで45万、ミスリルが8キロで80万、ヒヒイロカネが5キロで110万よ。合計で735万円ね。ギルドカードに入金でいいわね?」


「そうですね。あっ、現金で10万貰っていいですか?」


「うん。いいわよ! ねぇ、翔真くん。一体何があったらこんな事が出来るようになるの?」


「樋口さん、それ」


「美麗(みれい)よ」


「はい!?」


「私の、な・ま・え! 美麗(みれい)よ!」


「は、はい! 美麗さん! それは、蘇芳をテイムしたことです! 俺の人生はコイツが仲間になったことで変わりました」


「そう。やっぱりテイムしたことで、強くなったのね。……ボソッ私もテイムされちゃおうかしら」


「ん? どうしました?」


「ううん! 何でもないわ! これ、現金化した10万円よ」


「ありがとうございます! 今日は豪華にご飯食べれます!」


「そうでしょうね! あやかりたいものだわ!」


「ん? 一緒に食べますか?」


「いいの!?」


「はい! 美麗さんには昔からお世話になってますし、ダンジョン攻略記念でご馳走しますよ!」


「やった! 行くわ! 今は4時12分……今からは無理だから……1時間後に噴水前でどう?」


「はい! 噴水前に待ち合わせで! オッケーです! では、一旦出ますね!」


「うん! またね!」


「はい!」


 美麗さんとの話が終わるとギルドを出た。


 案の定、ギルドは騒がしくなっていた。



 翔真がギルドを出た後の内部。


「おい! あそこのダンジョンは、複数のパーティで行かないと無理だって言ってたよな!?」


「そりゃそうだろ! 5メートル以上ある白い大蛇がいたんだぞ!? そんなのどうやって倒すんだよ!?」


「でもよ、あいつはそれを倒したってことだろ!?」


「アイツじゃなくて、魔物が。じゃねぇか?」


「あぁ。そうだよな? 翔真っつうやつ自体が、強いってことはないよな」


「確かに! だって、テイマーだもんな!? 魔物と引き話せばどうって事ないんじゃね? 美麗ちゃんとデートの約束なんてしやがって! 許せねぇ!」


「おい! だれか、アイツにかましてこいよ!」


「辞めとけって! 魔物も一緒だろ?」


「適当に離して連れ出せば大丈夫だって!」


「上手くいくか?」


「俺は、しらねぇぞ?」


「俺らは、お前みたいにビビらねぇんだよ!」


「はっ! 俺は降りる!」


「全員で行くか?」


「「「「だな」」」」



 ギルド出た翔真は、宿をとっていた。

 前までの宿は追い出されたが、資金が大分余裕が出来たので、少しいい部屋を借りることにしたのであった。


 薬は使わなかったが、ピッケルはダメになりそうだったので、買いに行った。


 少しブラブラ見ながら噴水の所に行こうかなぁとしていた時。


「おっ! 君が噂のテイマーくん?」


「ん? 噂の?」


「テイマーなのにダンジョンを攻略したっていう人?」


「あー。たぶん、そうっすね」


「そ、その威圧感のある魔物は下がらせてくれないか?」


「あー。はい。蘇芳、ちょっとあそこで待っててくれるか?」


『ウガッウガウガ(はーい。わかった。気をつけてね)』


「おう」


 蘇芳と会話していると。


「ねぇ、不思議なんだけど、魔物と話せるの?」


「えっ? はい。アイツ普通に喋ってません?」


「喋ってないよ? ウガッとしか言ってない」


「ふーん。で? なんの様っすか?」


 すると、いきなり囲まれる。

 そして、態度が変わった。


「お前さぁ、あの魔物がいねぇと何も出来ねぇんだろ? どうやってあのダンジョンコアを手に入れたんだよ? そんなに強え魔物なら譲ってくれよ? なっ?」


「お前は強くねぇだろ? 言う事聞いた方が良いんじゃねぇか?」


「あとよ、さっき現金化した10万円よこせ。それで美麗ちゃんと俺らがデートするからよ」


 口々に要求をしてくる解放者達。


 トラブルの匂いがするが、どうなるのか……

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