第6話
黒曜の貴公子と降格組のノエル・アゼットがパートナーになるという波乱の展開から幕を開けた結びの儀。
スターライトから降格した生徒は編入されたクラスに関係なく宣言する順番を最後に回されてしまうため、一番手に対し異議を唱えパートナーが最速で決まることなどアインホルンの長い歴史を振り返ってみても前例がない事態であった。
進級時にうまれる通常の降格組であれば、元スターライトという肩書を信じ指名札を渡す聖騎士も珍しくないが。
ノエル・アゼットの場合、学期中に行われた異例の降格ということで誰からも指名札が貰えず聖騎士を得られないまま結びの儀を終える可能性が高いだろうとみられていた。
「あたしは馬鹿ラ…ランディ・ライオネルさんに対し宣言を行うわ」
「どなたか異議はありますかぁ~?? 」
「あるわけないでしょ、彼の指名札はあたしの手元にあるわ」
「ではぁ、決まりですねぇ」
指に挟んだランディの指名札を突きつける形で、結びの儀を終えたロゼッタは。
自分たちの教員に対するあまりの態度に苦笑いしながら近づいてくる
聖女として前期二位の成績を収めたロゼッタは案の定、多くの聖騎士たちから人気を集めていたが。
目当てのクラウスを取り逃した今、彼女はこれ以上騎士を抱える気はないようだ。
「仰せのままに」
ロゼッタから残りの指名札を受け取ったランディは、爽やかな笑みを浮かべたまま分厚い指名札の束をその場で二つに引き裂いた。
「これでよし、ですね」
◇◆◇
結びの儀を終え。
今日はパートナーとの親睦を深めるようにと、全クラス残り時間は自由行動となった。
「ローウェン、その」
「クラウスでいい。 ローウェンは義妹と被る」
「……クラウス」
「なんだ? 」
「どうして、私を選んだの」
「……」
「聞いてない? 偽聖女だって噂。 この間の連休中に、私…聖輝力が…その…」
「関係ない」
「え? 」
「俺はお前を、聖女としての才覚で選んだのではない」
「なら何故? 」
「それは……」
「……やっぱり、言わなくていいわ」
「……」
「やっぱり、今は聞きたくない…」
「ふっ、そうか」
「なっ、今笑ったわね…! 別にいいいでしょ…貴方も言いにくそうだったわけだし」
「そうだな」
「……それと、ノエルでいいから」
「ん? 」
「私の名前っ! どうせ今まで、私の名前なんて気にしてなかったんでしょうけど…。 お前じゃなくて、これからはノエルでいいから」
「そうか…。 ノエル」
「な、なに? 」
「よろしくな」
「……ええ。 こちらこそ…その、よろしく」
定め通りにその力を失った少女は、代わりに彼女だけの騎士を得た。
自らの運命に抗うと決めたこの日から、全てが……動き始める。
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