第6話 すべきこと
「あ~~、マジで危なかった~~」
俺は草が生い茂った草原で仰向けに横たわっていた。数分ほど口から出すもん出してようやくスッキリした。
スッキリしたけど身体が痛くて動かない。マジで全身バキバキ。なんか筋肉痛みたいな。
『ふむ。やはり貴様の肉体を『浸食』して戦える時間は限られているか……』
「はあ……はあ……しん……しょく……?」
『うむ、我が貴様の肉体を乗っ取り、操って戦う手段なのだが……これを使うと宿主への負荷が尋常ではないのだ。貴様は肉体強度が常人より少しばかり上だったのと、我との肉体の親和性が高かったために、全身にしばらくの間動けなくなるほどの痛みが出る程度で済んだ。もしこの二つの要素のどちらかが欠けていたら貴様は負荷に耐えられず肉体が爆発していた』
「爆発って………」
あの窮地を脱するためとはいえ、そんなとんでもないもんいきなり使わないでくれよ。
『仕方なかろう。あの中には、我が今まで出会ってきた人間の中でも上位に位置する強者がいたからな』
「あ~、あの長い黒髪の女性?」
なんか他の怪魔ハンターたちと雰囲気が一線を画していた黒髪長髪の美人。確かにアレは俺から見てもやばそうだった。てかやばかった。
あの女性が放った光線、リベルは容易く避けていたけど俺は目で追うことすらできなかった。まるで光の牢獄に閉じ込められてたかのように。
誰だったんだろうなあの人。
『確か、ジュウガサキ………と言っていたか?』
「………………ヴェ?」
え? 今なんて?
『聞いてなかったのか? 他の怪魔ハンターたちがぼやいていたではないか。ジュウガサキだの『百殺の銃皇』だのと』
「………………」
ひゃくさつの…………じゅうおう……………?
「ぬわあにいいいいいいいいい!!!?」
『ぬ?』
俺は全身の痛みを忘れてしまうほどの衝撃を受けた。
知ってる! その名前めっちゃ知ってる!!
「まままマジでそう言ってたのか!!?」
『ああ………なんだ、知り合いか?』
「ちげえよバカ! ジュウガサキっつったら……『百殺の銃皇』っつったらァ!!」
『百殺の銃皇』ことジュウガサキ・モリフユ。
『和国・イアポニア』最強の怪魔ハンターである『和核七戦鬼』の一人。
イアポニア全土を恐怖のどん底に陥れた、識別クラスの『赫』の怪魔、個体識別名ベヒモスを単独で討ち取ったっていう、生ける伝説と言われているガンナー。
その偉業は世界全土に轟いており、俺の国にも知らない奴はほぼいない。
イアポニアどころか、世界が誇る英雄だ。
『ほう、それほどの者だったのか。ならば尚更死合いたかった……』
だが本当にあの人があのジュウガサキ・モリフユなら、それをまるで赤子扱いしていたリベルは一体………
『とりあえず、貴様は少し休め、あと一時間ほどしたら動けるようになるはずだ』
「お、おう」
まあ今はリベルの言う通りこの身体を休めよう。思いっきり叫んだせいでさらに痛くなってきた。
ホント……マジで動かない。
俺は少しの間、仮眠を取ることにした。
# # # #
『おい、そろそろ起きろ』
「…………ん~」
俺は脳内に響くリベルの声によって目が覚めた。
まだ日は高い。
「ふわ~あ。おはよう」
『もう昼だがな。仮眠はもう十分だろう』
身体の痛みはほぼ消えた。
これくらいなら自由に動ける。
俺はぐい~っと身体を伸ばし、立ち上がる。
「さて、これからどうしますか……」
『しばらくは野宿だな。食事に関しては三日に一回ほどで貴様は済むから、餓死するということは無いだろう』
「マジか……」
野宿か……。
つっても仕方ないよな~、金が無いし。とは言ったもののいずれは何かしら金稼ぐ方法を見つけないと。人間金なしじゃ生きていくのは難しい………俺もう人間じゃねえけど。
『ならばこの先に街があったはずだ。飛んできたときに目に入った。歩いていけば二日ほどで着くだろう』
二日って………一体どんだけ離れたところに着地したんだよ。
「はぁ、こっちいけばいいのか?」
『ああそうだ。1時間ほど歩いたところに確か狼の怪魔の群れがいたから燃料補給がてらそ奴らを全て喰い殺してから街へ向かうぞ』
「………へいへい」
もう数え切れないほどの不安があるけど今ウジウジ悩んでも仕方がない。この
俺はこの先起こるであろう様々な出来事の期待と不安を胸に、二度目の人生への歩みを再開した。
# # # #
プロローグ 完
ここまで読んでいただきありがとうございます。ちょっとした息抜きに新作書いてみました。
次回から第一章なのですが、まだ構成がまとまってないので、投稿まで少しお時間いただきます。申し訳ありません。
厄災のリベルタス ゆきたか @Taka090312
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