その行く先々では

 屋敷では、アシュレイの様子がどうやらおかしいらしいと噂になっていた。


「何かあったんですよきっと」


 ミアムを引き寄せスラッシュが慰めている。ルバートがふうとため息をついてコーヒーを淹れていた。


「坊っちゃんらしくもない」


 キッチンでミーシャがテーブルに座りミルクとサンドイッチなどを口にしながら言い、スラッシュがミアムの頭を撫でながらずっと宥めている。


「何もないよ、きっと坊っちゃんは気が迷っただけだよ」


「でも」


「なんかあったら俺とキャベルがいるから」


 それからミアムはわんわん泣いた。今日は仕事にならない、キャベルは適当に硬いパンなどくわえて掃除にでかけた、今日はモップがけだ。ミーシャは卵を置いて牛舎や馬小屋の掃除に出かける、今日のルバートの仕事はアシュレイと話をすることだ。

 スラッシュは庭の水撒きに出かける、ミアムもついてきた。


「大丈夫だって!」


 スラッシュが一面の花畑に水撒きをする様子をミアムは座って見ていた。自室で塞ぎ込んでいるアシュレイが、ルバートが入っできたのにきづいて、暖炉の火を消した。


「こんなに温いのに火を起こしていたのですね」


「ミアム、怒っているかな」


「怒りはしません、ただ怖かったのですよ何かあったのですね」


 返事をせず、キングベッドの上でうつ伏せになっているアシュレイは、震えていた。紅茶でも淹れて持ってこよう。ルバートは部屋を出ていった、心の整理をするのには時間がかかる。

 それから紅茶をもってきて白磁のティーポットにソーサーの上に最近輸入品を取り扱う業者から取り寄せた東洋の青磁のマグカップ、ゆっくり起き出しアシュレイはそれを口にして庭に出た。

 遠くでスラッシュがミアムを抱き寄せるのが見える、そうか、そうだったのか‥‥と、アシュレイが言うと、違いますよとルバートが苦笑した。


「我々は屋敷をいっしよに経営する仲間みたいなものです、坊っちゃんあなたもそうなのですよ。いっしよに戦う仲間‥‥」


「俺は間違ってるよ」


「気の迷いは誰でもあります」


「また、話したくなったらいつでもルバートに」


 ルバートは大人しく飲み終わった紅茶セットを持って出て、キッチンへ向かいそれらをゆっくりと洗った。今日は家庭教師は来る日ではなかったはずだ。それから郵便配達員が来て、聖騎士団に集合の号令がかかったことを知らせた。

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