手紙
ルースが慌ただしく屋敷をあとにして、しばらく経った頃、アシュレイにはようやくリトルからの手紙の返事が来ることになった。
でも差出人は違っていた、リトルの弟からだった。
アシュレイ様
姉に手紙をいつもありがとうございます
僕が代わりに返事をしたためているのは、
あなたに伝えなければならないことがあるためです。
姉は今幽閉されています、禁忌をおかして
目を触媒にして禁呪をやったのです。
姉はあなたが思うような清廉潔白な魔術師ではありません、恐ろしい黒魔術師なのです。
ハイランドの意向によって今捕らえられていますが、ルヴァ様の働きかけでそのうち出られるでしょう、
アシュレイ様あなたもあの悲劇の犠牲者の一人でした、ルヴァ様もそして僕も。
何らかの神の力で生き返ることができて
そして不幸ながら損傷が激しくて
もどってこれなかった人々がいました。
あれからあなたと姉はどういう接点があったのかは僕にはわかりません。
姉は
あなたとは生きてる世界が違います
それから心に決めた人がもういます
姉は鈍感なのであなたの思いに気づかないだけなのです。
僕からは以上です。
アシュレイはそこまで読んでぼうっとして
まだ少し冷える部屋のカーテンを締めて、ガウンを羽織った。そうして、暖炉の火を起こして、その手紙をビリビリに破いて、薪の上にちょっとずつ焚べた。
アシュレイは、そんなこともしかしたら、もうとっくにわかっていたのかもしれなかった。一方的に思いを寄せただけの関係だったのは、でも面と向かってリトルの口から聞いたわけではなかった。
リトルが宮廷魔術師としてキャリアの道を進んでいく人生の道の先に、たぶんアシュレイとここで使用人と生活するだなんて選択は、しないであろう。
アシュレイは目を擦って、火花を見ていた。
エルキナへ一度帰って、リトルにきちんと話を聞いてこの恋は終わったのか直接きくべきだと思った。
野暮である。
そこまで火を見ながら思った、誰が見ても見込みない恋を追うほど、野暮でもないと、涙すらでない目を擦った。シーツの取替に来たミアムが近寄ってきてどうしたんですか?と顔を覗いたので、アシュレイはミアムの手を引き寄せた。
「キャッ!」
ミアムの顔色が変わり、取り替えにきたシーツを投出して逃げ出してしまった。
「ごめん‥‥」
それからすぐにキャベルが来て、何かあったんですか?とアシュレイに問いただした。
首を静かに横に振って謝っといてと言ってアシュレイはベランダに出た。
「自分で謝らないとだめですよ」
キャベルは少し怒った風でペチュニアを眺めるアシュレイの後ろで掃除をして出ていく。
もう、どうでもよくなったのかもしれなかった。
それこそ男爵が落ちてしまった地獄にアシュレイも行こうとしているのかもしれなかった。
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