親の手紙

 アシュレイが朝起きて顔を洗って、ダッシュで郵便受けに向かうと手紙がきていた。リトルかな?と思い、差出人を見ると親だったのでアシュレイはしょぼんとして引き返してきた。


 昨日倒れたルバートは今日、休んでいた。話を聞いていなかったミーシャが肩を震わせてて泣いていた。坊っちゃん、あの人、人好きのする優しいひとだったんですとスラッシュが後ろから声をかけた。


「俺なんか拾ってくれるんだからな‥‥」


 スラッシュがスムージーなどを片手に庭に向かう。

 庭は一面の雪景色だ。鶏の世話をしていたミーシャが赤い目をしてスラッシュに話しかける。


「なんでおいらたちには何も出来ないんですか?

 なんでこんなにも無力なんですか?」


「虚勢を張ったって俺等なんかだめなのさ、ただの雇われ人なのさ、それ以上でもそれ以下でもない‥‥それがあの人の運命だったのさ」


「うう‥‥でも」


 ミーシャの気持ちもよくわかる。男前で誰にでも優しくて人好きする男爵のことをみんな好きだった。

 ミーシャのことを妹のように可愛がっていた、今日のような寒い冬捨てられていた赤ん坊だったミーシャを。特にこの屋敷ではルバートとミーシャとミアムは男爵と過ごした時間が長い。アシュレイなどに至っては男爵という存在は屋敷に取り憑く亡霊のような存在かもしれない。スラッシュはここ四年くらい来たばかりなのでもうそ頃には男爵は女に騙されて夢中になっていた。夫のあったあの小柄な派手な女に。


「俺等は今のことを考えて一生懸命やるしかないんだぜ」


「うん‥‥」


「変われなかったのさあの人は‥‥」


 人を変えることはできない男爵はそんな運命の中を突っ走って落ちていってしまった、ただの使用人には止められない。


 アシュレイは手紙の封を切って読んでいた。


 ユーリの遺体はどこに埋めたのですか

 供養に行きたいのです


 などと書いてあった。姉のことを、家に戻っている間親は言及しなかった。レアデス家の墓地に埋めてあるたしか端から3番目のところに。菊を植えてある。記憶を手繰り寄せて乱雑に書き終えていく。



 もう戻る気はないのですか?


 アシュレイは微妙な気持ちになってペンをおろした。エルキナの思い出は楽しいこともあったけれど長い間レアデスに仕えた身からするとあまり思い出したくない。親とのおもいでも姉とのおもいでも辛くて悲しいなんともいえない寂しさで染まっていく。賢くて優しくてそんなリトルコールティンの思い出だけが強く残っていた。

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