誕生日を迎えて

 アシュレイがリビングにあるリクライニングチェアで寝てるあいだ、使用人たちはケーキ作りに奔走していた。冷やしたボウルで生クリームを泡立てる、スポンジケーキ作りを古びたオーブンでしている

 こんがりきつね色に焼けたスポンジケーキをミトンを被せた手でオーブンから取り出し、バターの香りが芳しい。キャベルは今日、暇を出してもらって親のところへ帰っていた、給料が少しは出たので親に渡しに行くと言っていた。


 スポンジケーキの固くなった部分を切り丁寧にミアムが生クリームを塗っていく。そうして苺などを乗せて完成である。


「出来た!」


「さっすがー!」


 スラッシュは残った生クリームを食べていてこら!とミアムに怒られてた。

 ルバートはお疲れ様でしたと言ってコーヒーを淹れはじめる、洗い物をしていたミーシャが手を拭きながらウインナーコーヒーにするっすか?と無邪気に聞いてそうですよと言って微笑んだ。


「きっと喜ぶッスよ坊っちゃん!」


「甘いものはお好きでしたっけ?」


「なかなか疲れたな」


 ずっとミアムの様子を見ていただけのスラッシュがそういったのでスラッシュはまた怒られていた。アシュレイが起きてくる頃にはすっかりパーティの用意は出来ていてタンドリーチキン、コーンポタージュ、とっておきのシャンパン、ローストビーフとトマトなどのサラダなどが並んていた。


「なになに?」


 使用人が坊っちゃんおめでとうございます~と口を揃えて言った。


「‥なんだっけ」


「誕生日ですよー!自分の誕生日を忘れていいのはルバートさんだけですよ!」


 ミーシャがそう言うのでルバートはたしかに今何歳だったでしょうか?などと言って考えていた。


「さあさあ座って」


 スラッシュが椅子をひいたのでアシュレイはちょこんと座りケーキがやってくる。


「18か‥‥」


 ずっと宮仕えだったアシュレイは自分の誕生日を祝ってもらったことなどなかった。実家に帰っていた間もわずかな間で親からも祝われた覚えがない。ロウソクを立て火を消して、拍手が巻き起こると使用人たちからプレゼントですと紺色のマフラーをもらった。


「お前ら‥‥ありがとう」


 誕生日のことを言ってないのでルースもフェリクスもオルフェも来ていない。12月のこの日は穏やかな日だった。そうあのときみたいに‥‥


 リビングに飾ってあるアシュレイの肖像画が素晴らしく目をひく屋敷にキャベルが帰っていた。キャベルはお土産ですと言ってフルーツの山をどっさりと持ち帰る、どうしたのこれ?とミアムが聞くと母の仕事の成果ですと言うのでキャベルの実家は農家なのだと知った。


「キャベルおかえり」


「あ、坊っちゃんおめでとうございます~」


 すっかり食べ終わり口を拭いてるアシュレイとアシュレイの皿の片付けが終わったらごはんにして風呂にして寝るだけの使用人たちがダイニングルームに集まっている。キャベルの持ち帰ったフルーツはばんごはんだ。アシュレイはマフラーをさっそく巻いてパジャマを用意し風呂に急いだ。いつまでも幸せだここで。多分ここでは永遠に。

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