アシュレイ家庭教師をつける
「え‥‥?家庭教師?」
「ええ、坊っちゃんにマナーや勉強を教えてくださる家庭教師を募集しようと思いまして」
「そんなもんいらねーよ俺は宮仕えだったし自分で勉強もしてる」
朝起きてダイニングに来て、朝の玉子焼きにケチャップなどをかけている時に突然言われたので、勘弁してほしいと言うのだったがルバートは聞かなかった。じや、募集しますねと言って張り紙をつくりにいってしまった。
「俺の意見を聞きやしない‥‥」
「ダンスを教える人はいませんよ、坊っちゃん踊れるんですか?」
ミアムがそう言って皿を取り替えると新しいじゃがいものスープとサラダが来た。
「踊れるわけないだろ、俺は音楽以外のことなんて何もわからないんだぞ」
そう、だから必死で勉強しているのだ。あまりにも無知で世間知らずなので今更遅いのかもしれないけれど知識を吸収している最中なのだ。
「じゃあ先生をつけるしかないじゃありませんか」
ミアムがそう言って平らげた皿を下げる。食後にコーヒーが出た。白磁のマグカップに口をつけ、一息つくと、そういうのが嫌だから騎士になるためにここに来たのにと文句を言った。
「人生は一生勉強なのですよ坊っちゃん」
そう一言言ってミアムが立ち去った。ちえ‥‥といってアシュレイは口元をナプキンで拭いて、乳搾りが終わって朝食を取りに来たミーシャと出くわし、勉強の気晴らしに買い出しに行きましょうよと誘われた。
「野菜?」
「肉もです!執事さんから金貨もらったんでお使いに行くんです」
「馬の扱いの練習がてら行くかー」
「じゃあ決まりですね!」
アシュレイはあれから馬に乗れるようになった。芦毛の春駒が、乗せてくれる気になったのである。最初は苦戦したけれど慣れればそうでもない。ミーシャと田園を走り市場へと急いで、屋台の匂い立ち込める騒がしい市場へと来ていた。アシュレイが飴の屋台のところで立ち止まる。飴細工の屋台だ。ミーシャのぶんも買って野菜を大きな籠に山盛り買ってきたミーシャが喜んでいた。
「今日野菜安かったです、スラッシュが育てられるなら買わなくていいんですけどね!」
「野菜育てるのって難しいのかなあ‥‥」
やったことがないので何もわからない。今のところアシュレイはプリムラジュリアンを育てるのと勉強するのだけで精一杯である。財布はルバートからしつこく言われたので牛の皮の長財布を買った。そこに紙幣や金貨がそこそこ入っている。それから花屋で花菖蒲を買った。紫色の、可憐な花。
「エルキナにはあんまり咲かないタイプのやつだよこれ」
「綺麗ですね」
スラッシュの影響なのか、すっかり花のある生活をするようになったアシュレイである。帰って馬小屋に馬を止めてルバートがチラシを作って待っていた。ルバートに花菖蒲を渡して、例のガーベラの模様の花瓶にさっそく挿した。菖蒲の紫色は高貴に満ちて、ピンク色をしたスイートピーとはまた違った艶やかさを醸し出していた。これから忙しくなる。そう言ってルバートは書斎に向かったアシュレイの後ろ姿を見つめ、台所へと急いでスイーツを作りに行くのだった。
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