アシュレイ園芸をする
その日の朝、ルバートから予定を聞いたアシュレイはうへえといって苦い顔をした。明日の夕方来るのは銀行だと聞いたからだ。下っ端を寄越すなんて随分なめられたものですねとルバートはプリプリ怒っていた。アシュレイは誰が偉くて誰が偉くないのかまるで見当がつかなかった。ミーシャがやってきてスラッシュが畑で使ってるくわが壊れたと言っていたと言いに来た。仕方ないと言ってルバートはしぶしぶ金貨を取り出した。
「お菓子買ってもいいんですよね? 」
「買い物に俺も行きたい」
「市場のトルコアイス絶品すよ!」
屋敷には馬は三頭いる、黒い馬は軍馬下がりのお母さん、葦毛の太った馬はお父さん、そしてアシュレイを乗せてくれることにしたらしい葦毛の駒が一頭いる。毎日の訓練の結果、アシュレイはどうにか少し走ることができるようになったのだ。
「市場までそんな距離ないですお散歩ついでに行きましょうか」
「あ、そうだ来客用の紅茶も切らしていたのです、アッサムでいいので買ってきてください」
「はーい」
二人で馬を走らせ市場まで来ると、にぎやかな風景が目に飛び込んでくる。市場から少し離れたところにある商店街はすこししゃれた風でカフェやコーヒー豆、輸入雑貨などの店がある。
馬を近くにつないでミーシャが多分園芸用品のところだよなー等と言って商店街をさまよう。園芸用品の店は大きくてすぐに見つかり素晴らしく咲いた胡蝶蘭などが飾ってあってアシュレイは目を奪われた。特に目を引いたのが小柄で大きな花弁をつける色鮮やかな花。値段を見ると240ゴールド、品種はプリムラジュリアンと書いてある。鍬を持ってミーシャが近くに来るとそれが気に入ったんですかと聞いた。
「買ってもいいかなこれ」
「わかりません坊ちゃんのお金だからいいんじゃないですか」
その華奢ながら可憐なプリムラジュリアンは故郷に置いてきた仲間のリトルコールティンのようだと思った。鮮やかなオレンジ色。
それから紅茶の品種がひしめくお茶屋さんに向かいミーシャがアッサムを300グラムほど購入し、例のトルコアイス屋さんの屋台でアイスを食べた。それから帰路につく。これをどうやって育てるのかスラッシュに聞かなくてはならない。スラッシュはスイートピーのシーズンが終わった後の花の種まきをしていて、プリムラジュリアンを買ってきたと言うとひどく驚いていた。
「こいつはおひさまが好きなので日当たりのいいとこに置いてやってください」
「わかったありがと」
ベランダに置いてプランターに移し替える。その日アシュレイは新しい楽しみを見つけたのだった。
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