日常の訪れ

 美しい女王陛下と華麗なる聖騎士団との会食が終わり、アシュレイは屋敷に戻ってうたたねしていた。お昼ダイニングで取ったウインナーのポトフとベーグルが眠気を誘っていたのだ。おまけに難しい本、リビングのリクライニングチェアでぼうっとしながらうとうとしているとルバートが寄ってきてコーヒーにしますかと言ってくる。


「頼むよルバート眠い」


「かしこまりました」


 ルバートがキッチンに移動しコーヒー豆をミルで挽いた粉をドリップしそれを白磁のマグカップに入れて持ってくる。


「ありがと」


「いえいえ」


 それを口にするとほのかに苦い。少し目が覚めた気がする。どこかの頭が良い人が書いた論文に目を通す。わからない単語は辞書を使っていたので時間はかかった。時計は三時を指している。


「ああもうこんな時間か……」


 本をテーブルに置く前にしおりを挟んでミアムがいつもピカピカにしてくれている机に置いた。机にはガーベラの模様の花瓶がありそこにスイートピーがさしてある。

 廊下で怒鳴り声が聞こえる。またスラッシュがサボっているのだ。


「お前いつか首にしますからね!」


 ルバートがカリカリしながらそう言うとスラッシュはへいへいと笑っていた。


「草刈りに行ってきますよ」


 鎌を持って庭に移動しようとするとアシュレイと鉢合わせしたので軽く頭を下げた。


「まあ立派にやってるしだいたい……」


「あいつは許しません」


 自分にも他人にも厳しいルバートはスラッシュみたいな人間が許せないらしかった。


「部屋に戻って昼寝する」


「お疲れさまでした、牛乳がいいですよ」


 ルバートはキッチンを眺めて何が作れるか考えていたらしかった。


「行くね」


 アシュレイは部屋に戻りベッドにごろんと横になったがあまり眠れずさっきのコーヒーのせいだなと独り言を言い、。戸棚から取り出した故郷の両親からもらった手紙や初恋の女の子からもらった手紙を読み返していた。リトルコールティンは故郷で一緒に旅をした仲間で国の宮廷魔術師をしている才媛である。おかっぱ頭に黄色いスカートのローブ、皮の編み上げブーツを履いている。色が白くて線が細く顔立ちは美人とは言えないかもしれないけれどそれなりに整っていて何より愛嬌がある。その思い出をしたためているその手紙は安らぎであった。親の手紙は見たくもなかった。まだ封も開けてないのだ。


「坊ちゃん、今日は庭に木苺が実っていたので木苺のパンケーキとミルクセーキですよ」


 デザートを持ってきたルバートは寝ているアシュレイを見てふふと笑って部屋に置いて退出した。

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