散策へ

 スラッシュが庭の水まきを終えて花壇で一服しているとアシュレイがやってきた。ミアムも最近スイートピーを見ながら昼食を食べているのでミアムもいた。タバコの火を消して坊ちゃんと声をかけるとやあスラッシュとミアムと言って疲れた笑顔を見せた。

 アシュレイはミーシャの馬小屋へ顔をみせたあと乗馬の訓練をしていたのだ。騎士なので馬にも乗れないようではいけない。一時間ほどの稽古のあと疲れてスイートピーを見に来たというわけだ。


「乗れるようにはなりそうですか」


 ミアムがチーズを食べながら言うとアシュレイはわからないといって腰を下ろした。お母さんは軍馬だった駒は葦毛で気性が優しいので多分大丈夫といわれたもののてこずって帰ってきたのだ。


「俺はあいつになめられているんだろうか」


「なめられちゃいないでしょうけど嫌われてるのかもしんないすね」


 そうやってまたタバコに火をつけてスラッシュがぷかあと煙を口から吐き出すと、タバコはおいしいの?とアシュレイが聞くのでこれは癖みたいなもんですといって笑った。


「あいつに好かれるにはどうしたらいいんだろう」


「毛づくろいでもしたらどうですか」


「うう、ずっと撫でてやったのに」


 腰を下ろし三人でスイートピーの花壇に居座ってるとルバートがお昼ですよとアシュレイを呼びに来た。


「あら大変こんな時間」


 ミアムが起き上がって台所へと急ぐ。スラッシュは昼寝したあと草刈りだ。ルバートが除草剤を撒いてくれたのですっかり綺麗になったがまだ全部は手付かずの広い庭だ。草刈りしなければならないところがたくさんある。それを全部やり終えるには時間がかかるだろう、スラッシュは重い腰をあげて鎌を持って立ち上がった。

 アシュレイはダイニングへと移動した。広いダイニングテーブルの上にアイボリー色の青い模様のあるシックなランチョンマットが敷いてあって銀のフォークとスプーンとナイフが置いてある、燭台にろうそくが灯っていてほのかな明かりがダイニングを照らしている。今日のランチはパンに切ったチーズが添えてあるものと朝の残りのひき肉のスープそれから魚だった。


「あれ魚……?」


「実は川釣りに行ってきたんですスラッシュたちと」


「なんだかんだ言って仲がいいんだな」


「……あんな奴ですけどね」


 川魚は酢でつけてあるマリネで、これ誰が作ったのと聞くとルバートが私ですと静かに言った。


「たくさん釣れたのでしばらくおさかなですよ」


「うまい」


「ありがとうございます」


 それから食後にコーヒーを出してミアムがそれを片付ける。

 釣りに行くなら誘ってくれればよかったのにとアシュレイは思っていたがそういえばもう立場は違うし彼らは友達ではないのではないのだ。聖騎士団との顔見合わせまであと一週間程度だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る