仕立てやへ
ルースが帰ってひと段落つき、いつもの日常が戻ってきた。アシュレイはフェリクスのことをルバートなら知ってると思っていた。
「フェリクスの家はどんな感じなの」
「フェリクス様は王家の遠縁の坊ちゃんで聖騎士団の一番若い方です、伝統的に爵位をもつ方なのでそれはそれは偉いのですよ」
フェリクスはセーラー服金髪おかっぱの少年である。
「船か何か持っていてたしか事業をしているはずです、輸入品か何かだったか……」
遠い記憶は定かではない。すこし考えていてルバートは正直にわかりませんと言った。
「そうだ坊ちゃんタンスの中を見たんですが礼服が一着しかないんですか」
「あれはもらったものだから特別」
「それはいけません聖騎士団はお金持ちばかりなのですよ?」
「あれでいいんだ」
「いけません」
舐められるということはいけないとルバートがさとして町の仕立て屋まで急ぐことになった。馬車をひくのはミーシャである。ルバートもついてきた。会食まであと二週間である、赤い屋根の仕立て屋に到着するとさっそくルバートが交渉を始め、予算を告げると店員は時間がかかるかもしれないと濁し、なるべく早くとお願いした。生地はなるべく見劣りしないものでおしゃれでスマートでエレガントなものと注文すると店員はさっそくアシュレイの型紙を作り始めた。一度型紙を作ったら何度でも来れる。ミーシャは店にあった帽子やドレスなどを羨ましそうに眺めていた。
サイズを測り終わってアシュレイは、どっかでコーヒーでも飲みたいと言い出したのでアラビカ豆を買って帰りますとルバートは言った。ミルは男爵が置いていったものがある。アシュレイは食器だけは買いそろえたが男爵が男爵だったころの生活の様子がまだそのまま残されいている。食器は藍色と金色の縁取りのある白磁でなかなかよいものである。スプーンなどは銀で、でも燭台などはそのままだ。そんなことを考えながらアシュレイと一緒にコーヒー豆を選び、三種類くらいの豆を選んで包んでもらいお金を払ってコーヒーショップを後にした。アシュレイが従業員用のコーヒーも買っていいんじゃないだの言ってくれたのでお徳用のコーヒー豆も一緒に買った、あとはアシュレイ用の豆と来客用の豆である。
「おいらたちもコーヒー飲んでいいんですか!」
馬を用意しながらミーシャがはしゃいでいた。ただし安い豆ですよと言ったがミーシャは喜んでいた。今のところ黒字なのでコーヒーくらいは買える。屋敷に帰ったルバートはさっそくコーヒー豆をドリップしカップに注いでソーサーの上に乗せアシュレイのところまで持って行った。おいしいねとアシュレイが言うとルバートは引き下がって従業員のコーヒーを淹れて穏やかな時を全員と過ごすのだった。
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