Ⅵ‐6

 フルボッコにされて3日たった後もうまく体が動かせなかった。熱も出たしあちこち痛い。寝込んでる間に、やられたって聞いて心配したヨッチとバンブーが様子を見に来てくれたんだけど、二人ともブチギレてたし、仕返しに行く時は教えてって言われたけど俺は断った。


 ヨッチとバンブーに俺が伝えたのは、今回のことで俺の名前はむしろ売れた。逆に2人相手に10人がかりで来た先輩達はダサいって話になると思うと。この後も俺が狙われ続けるなら、その時は腹くくるけど、今回で終わりなら、それでいいって伝えた。


「ホントにいいの?」って、バンブーが何回も聞いてきてそのたびに「いい」って答えた。


「生意気な後輩が先輩にシメられただけっしょ。こんな話なら腐るほどあるわ。俺も懲りたし、いいかげん受験勉強でもするよ」

「だって、秀ちゃん青藍せいらん高校行くんでしょ? 今の秀ちゃんなら勉強しなくても受かるじゃん。本当なら推薦もらってもいいんだし」

「俺、あそこ1校しか受けてないし推薦枠が通らなかったから、落ちたらやばいじゃん。勉強しないと」

「ねえ、秀ちゃん、最近おかしいって」


 今度はヨッチが俺に色々聞いてくる。こういう時のヨッチはしつこいし鋭いから嫌い。


「何が? このままやってやり返して続けててもヤンキー一直線じゃん。今なら大人になったら昔やんちゃしてましたくらいで納まるって。令和の時代にパンチだのアイパーだのあてて3人揃ってグレるつもりも無いだろ?」

「やり返す気ならあるよ」


 バンブーが珍しく食い下がってきた。


「でも、ヤンキーになるつもりはないだろ? こっから先はそういうやつじゃないと無理っしょ。やってやり返して。どこだろうが、誰だろうがだぞ。よそで飯食ってる時もどっかでションベンしてる時も、どこで誰に恨まれてるか分かんねえっつって気にしながら、これからずっとそうやって生きてくか? 俺にそんな根性も気持ちも無いから。どうしてもやりたいなら、バンブー一人でやれよ」

「分かった、一人でもやるよ」


 バンブーが柄にもなく喧嘩に前のめりで困る。いいって言ってんだからほっといてほしかった。


「勝手にどうぞ。こんなボロボロのケガ人つかまえて何言っちゃってんのお前ら」

「秀ちゃん一人で行ったらキレるから」

「だから行かねえって言ってんじゃん」


 諦めたのか何なのか、とにかくヨッチとバンブーが部屋から出ていった。俺の言葉なんか、これっぽっちも信じちゃいなかったんだろうなあいつら。あの様子じゃ、ヨッチにもバンブーにも飛び火しそうだし、あいつらも動き出して巻き込むことになる。動くなら早い方がいい。

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