Ⅵ‐7

 このままで終わるわけがなかった。俺が粋がったのは今回ボコしに来た先輩達だけじゃないし、気分でぶん殴った後輩だって何人もいる。そいつらも全員反目に回るだろうし、落ち目の俺をぶったたいて便乗しようってやつらもいる。


 別にそれはいい。予想してなかったわけじゃないから。でも、カズさんのことまでは考えてなかった。自分が好き勝手やって関係無い他の誰かが傷つくとは思ってなかった。ほっといたらヨッチもバンブーも危ない。あいつらにまで手を出すつもりなら俺は鑑別所でも少年院でも入るつもりで動かなきゃならない。俺にまだいろんな可能性や選択肢があったとして、その可能性や選択肢が無くなることになっても俺はやる。


 自分の将来が今後修復不可能なところまでいってもいいとも思う。このまま大人しくすることが俺の未来や可能性なんだとしたら、俺はそんな未来や可能性にすがりつきたいとも思わない。


 片っ端からやってやるつもりだった。向かってくるやつら全員と、終わらない泥仕合を何回でも付き合ってやるつもりだった。


 靴ひもを結び、玄関の前で「おっしゃ!」と気合を入れてドアを開けると外は雪が降っていた。吐く息は真っ白で外に出ると一瞬で頬と耳の感覚が無くなってくる。


 俺はみぞれになった雪道を歩いた。歩くたび先輩達にやられた膝がズキリと痛む。まだ時期じゃないのかもしれない。それでも俺は歩いた。膝の痛みは俺に、あいつらを許すなと言っているようだった。


 鏑木先輩が俺をやるのは分かる。ただ、カズさんにまで手を出したのが許せないでいた。後悔させてやりたかった。殺そうと思ってた。本気だった。世界はこんな自分を必要となんかしないだろうし、それでいいと思った。

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