Ⅳ‐6

 取りあえず、楢崎のやつ刺されたとか言ってたし本人に直接電話して色々聞いてみることにした。刺されて入院してるんだったら、まだ病院かもしれないし電話がつながるかどうか心配んだったんだけど電話したらすぐにつながる。


「もしもし? 俺だけど。あのさぁ、お前、刺されたん?」

「はっ? 誰に?」

「いや、我孫子の何とかってやつにお前が刺されて入院してるって聞いたんだけど」

「どこのデマだよ。だいぶ大げさに噂が広まってんな。お前も簡単にだまされてんじゃねえよ」

「いや、だってそう聞いたんだもん。えっ、じゃあ、何も無いの?」

「やられたのはホントだし、病院には行ったけど入院はしてねえから」

「えっ、やられはしたんだ?」

「うるせえなぁ、後ろからいきなり5~6人に金属バットでタコ殴りにされたらさすがに負けるわ」

「ふーん、おっかないやつらだのう」

「お前も気を付けろよ。お前みてえなバカはすぐ狙われるんだから」

「もう狙われたよ。見事に撃退したけど」

「どうせ正面から1人か2人だろ?」

「うーん、80人くらいいたかなぁ?」

「くだらねえから切るぞ」

「うっそ。ねえ、これからどうするの?」

「お前に関係ねえだろうが」

「えー、俺達も対抗して族作ろうよ。お前が頭でいいからさ」

「お前、族がどれだけ金がかかるか知らねえだろ? 特攻服だけでもちゃんとそれなりに文字入れたりしたら結構高いし、単車と免許入れたら100万くらいはかかるぞ」

「えっ、そんなにすんの?」

「するよ。それにケツ持ちに毎月まとまった金納めなきゃいけないだろうし、先輩いたら先輩にも納めるし」

「何それ? 全然楽しそうじゃないじゃん」

「だから言ってんじゃん」

「マンガとかで聞いてた話と違うんだけど」

「あれはかなり昔の話を基にしてるからな。そういう時代もあったのかもしれんけど、時代が違うし、今やろうってなっても先輩の手足になって金をかき集めさせられるだけで、楽しくならねえよ」

「じゃあ、我孫子のやつらは何で族なんかに入ろうとしたの?」

「あれもどうなんだかな。今回のことは原田が自分からやったんだろうけど、原田は原田で上への上納金集めに必死になってんじゃん。知らんけど」

「上納金? 誰に?」

「ヤクザだよ」

「へえー」

「お前、何にも知らねえな」

「知らないよ。っていうか上納金っつったって、俺達金稼げないじゃん」

「だからカツアゲしたり、上から渡されたステッカーとか在りもしないパーティーのパー券を売りつけて金を集めるんだろ」

「奴隷じゃん」

「頭とか幹部はどうか分かんねえけど、下は地獄だろうな。借金まみれだろ」

「地獄だな。そんなん、誰が入るの?」

「さっき作りてえっつったバカいるじゃん」

「うん、言ったけどやっぱやめる」

「吐いた唾、即行で飲んでんじゃねえよ。お前も俺も運がいい方だとは思うわ。戯神がどうかは分かんねえけど、もしかしたら原田もきっかけは俺達みたいに軽い気持ちで粋がっただけなのかもな。そんで地元のそっち系の先輩と仲良くなって戯神に誘われて、気付いたら抜けられなくなってるだけだったりな」

「何かややこしそう…。今回のは関わるのやめていい?」

「最初から誘ってねえよ」

「そうか、お前も気を付けろよ。死んだら元も子もないんだから」

「お前と一緒にすんなバカ」

「そうでっか」


 うーん、バイクでボンボボいわせたり、後ろに乗ってタコ踊りとかしてみたかったけど、そのためだけにずっと奴隷になるのはしんどいな。


 やーめっぴ。そろそろ夏休みも終わるし、西島とも会えるし、怖いの嫌い。

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