Ⅳ‐4

 喧嘩が終わって、みんな合流してまた麻雀やってた。ほんで、今回のことでヨッチに色々聞きたいことがあったから聞いたり、竹山がどれくらい強かったかバンブーに聞いたりした。


「今回は10人いなかったからよかったけどさ、30人くらいいたらどうしてた?」


 ヨッチは最初からずっと勝てるって思ってたみたいだけど、バンブーは竹山とやって結構ケガしてたし、俺もメッシュ頭に不意打ちでいったから勝てたようなものの、まともにタイマンってことになったら正直3回に1回は負けてるっぽい相手だった。それくらい危うい相手だったのにヨッチが何を根拠に勝つ算段がついてたのか気になった。


「大人数だったらその時は今回みたいなこと毎回して出し抜いていくしかないっしょ。相手に俺達は何してくるか分かんないみたいなイメージ植え付けて、そこをうまく利用しながら心理戦でいくんじゃない?」

「最初はよくても、そのうちまとまって行動するようになってきたら?」

「その時はまとまると困るようなこと考えてこっちから仕掛けていけばいいんじゃない? 知らない。実際にそうなったらその時に考えるけど?」

「えっ、じゃあ何? 今回のアドリブ?」

「まあね」


 何こいつ、怖い。そんな丁半ばくちみたいなプランで俺達を駒みたいに使ってたのかって思うとゾッとする。俺がクレーム入れようとしたらヨッチが先回りして補足説明をし始めた。

 

 アドリブっていうと少し語弊ごへいがあると。一応、事前に仕入れた情報で、今回の喧嘩で東中に集まっているのはせいぜいで10人前後だっていうのは知ってて、その10人の中にいざって時に役に立つようなのは今回潰した3人だけで、あとは風見鶏みたいなやつらばっかりなのも知ってたらしい。


 ほんで、要注意人物3人の中にタイマンで俺やバンブーより強いやつはいないだろうし、自分より頭のキレるやつもいないから、後は鼻クソほじってても勝てるって踏んでたって今孔明気取りのナルシストさんは言いました。


「今回のは相手側に喧嘩に負けても何回でも向かってくるやつが誰もいないって踏んでの作戦だから」

「俺かバンブーが竹山に負けてたり、ぶっちめても何回も来るような相手がいたらどうしてたんだよ? 実際、これで終わりじゃなくてメッシュのやつとか竹山がまた乗り込んでくるかもしんないじゃん」

「その時は別の手を考えるよ」

「別の手って?」

「その時になったら考える。それに何も思い浮かばなくても向こうも先輩出してきてるんだし、俺達も先輩出せばいいじゃん。カズさんに頼んで柔道部の先輩呼ぶとかさ」

「カズさんもそうだけど、うちの柔道部の先輩達って穏健派が多いから来ないと思うよ」

「嘘? そうなん? じゃあ、もしかしたらやばかったかも」

「やばかったかもじゃねえよ。危なかったんじゃん」

「その時はその時で、また何か考えるって。でもさ、柔道部、1個上は穏健派でも2個上は違うでしょ?」

「絶対やだ。ムラケンのこと言ってんでしょ? あいつに貸し作るくらいなら、何回ボコられてもいいから自分で解決するわ」

「言うほどヤンキーじゃなくない?」

「お前はムラケンのこと知らないだけ。あの人、高校入ってからさらに悪くなったらしいよ。性格と大腸が腐ってるから腸内環境終わってて屁がうんこより臭いとか、耳に入ってくる話、全部悪口だけだし」

「何だよその弱いエピソード。でもいいじゃん。解決したんだから」

「そうだけどさ」


 まあ、そんなこんなで、今回の夏休みの騒動はヨッチが作戦立てて俺とバンブーが実行して片がついた。

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