Ⅳ‐2

 ヨッチが尾笠原達を呼び出した花山公園っていうのは結構大きな公園で、中央に二つのでっかい丘みたいなのがある。俺達の地元では花山公園と呼ばずにおっぱい山と呼ばれることの多い公園で、喧嘩とか先輩が後輩シメるのに呼び出す時とかによく使ってる公園。


 約束の21時、おみやんの弟の康介こうすけにだけ様子見てこいって偵察には出したけど、俺達はおっぱい山には行かずに、おみやんちで麻雀してた。


「なあ、このままでいいの?」

「そろそろ、康介から連絡あるっしょ。相手が何人かも分かんない状況で喧嘩するのやだし」

「5人くらいだったら、もう今日行ってボコボコにしようぜ」

「尾笠原達だけで4人いたんだから、先輩合わせても、もっといるでしょ」


 バンブーが心配そうに「勝てるの?」って聞いてきたから俺は「知らない」って答えたし、ヨッチは「勝てるようにするの」って言いながらリー棒出してリーチ。喧嘩の最中だっていうのに緊張感が無いなって思ってたら偵察に行ってた康介から電話が来た。


 康介の話によると公園に集まってる人数は8人。木刀とか金属バット持ってるやつとかもいるって話だった。東中は俺達の代に竹山ってやつが強いって有名だったから、そいつも来てるだろうし、正面から行くと負けちゃうかもしれない。


「どうすんの?」

「この半荘はんちゃんが終わったら、俺達も康介と合流しようか」


 そう言って涼しい顔をしながらヨッチが親っぱねをつもった。リーチ、タンヤオ、ツモ、ドラ3。裏ドラが3つ乗らなきゃ7,700点チッチーで終わりの手が跳満かよ。今日のこいつは運を持ってるみたいだ。日露戦争の英雄、東郷とうごう平八郎へいはちろうも運のいい男って呼ばれてたみたいだし、争いごとは運のあるやつに乗っかる方がげんがいい。

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