Ⅲ‐3
よく考えてみたら、クラスも部活も違う西島と二人で会えるのって、このままだと夏休みの前までだよね? 部活が終わっちゃったら向こうも受験に専念するだろうし、部活があっても西島が図書館に来なくなったら会う機会が無くなっちゃう。
知ってた? 演劇部にも全国大会とかあるんだよ? それで最近は忙しいらしくて図書室に来なくなっちゃって代わりに俺が演劇部に行くようになった。
勝手に部室とか入っても顧問がめったに顔出さないから足しげく通うようになったし、通って分かったんだけど西島は演劇部の姫で、男女関係無く人望があった。
劇でも男装して舞台に出てて、男装メイクしてる時とか取り巻きの女子部員が萌えて西島に俺様ワードをリクエストしてたし本人もまんざらでもないし。
男子部員の数自体は少ないんだけど、同じクラスでアニメとマンガとゲーム好きな塚本ってやつがいて、そいつとは特に仲が良くなった。お薦めしてくるマンガも珍しくて『コブラ』とか『柔道部物語』とかやたら古いマンガだったし、テレビは時代劇が好きっていうマニアックなやつだった。
俺もじいちゃん子だったから夕方頃にやってた時代劇はよく見てたんだけど、塚本もそうだったみたいで、なかなか出会えない同志二人の間に固い絆が生まれた。クラスだとおとなしいイメージしかなかったんだけど部活だと全然テンションが違くて、好きなことを語る部活の時の塚本はすごく魅力的だった。
副部長で男子部員の中ではリーダー的な存在だった塚本は監督と脚本を担当してて、俺を主役に寸劇を撮ってくれたり、色々ともてなしてくれた。
一番うれしかったのは『桃太郎侍』に最後の殺陣のシーンで必ず言う「一つ、人の生き血をすすり」から始まる決めゼリフがあるんだけど、それがやりたいって塚本に言ったら後輩達に頼んで悪代官の役とかやらせて撮ってくれたことかな。
俺が主役だったからクオリティーはぶっちぎりで低かったけど、ノリノリで悪代官と手下達を斬り捨てまくったし、エキストラの部員達も二つ返事で斬られ役をやってくれた。
役者と裏方でも違うんだけど、役者やってるやつらは、みんな好きな映画なりアニメなりがあって、その名ゼリフを言いたがってるようなやつらばっかり。演劇部は日常生活の中に名ゼリフとかそれっぽいセリフぶっこんで遊んでる中二病の
俺が「間違っていたのは俺じゃない、世界の方だ」って言ったら「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ」とか「勝てない戦と負け戦は別物だ」とか、コードギアス好きがすぐ反応して集まって、それぞれが一番好きなセリフを言い合った。
もう最後の方とかコードギアス関係なくなって小道具作るのにガムテープ貼るのも「早くするんだ! 世界が終わるその前に!」とか部室出るだけで「行こう、アビスとカタストロフィが待っている」とか中二病のパワーワードっぽい単語なら何でもOKみたいになったし、セリフ思いついたら勝ちっていうゲームでキャッキャして遊んだ。
見た目って人との触れ合いで一番関係無いくせに、ものすごい影響力がある。俺は性格の悪いクソ
出会い方や気持ち次第で見方は変わる。見方が変われば風景が変わって、つまらないと思っていた毎日が、実は結構イケてるんじゃんってことに気付く。自分がマジでそう思えてるならそれは本当だ。己の幸不幸の判断は人に委ねちゃいけないのだ。きっとそういうのって他人の幸不幸を勝手に判断して頼んでもいないのに同情したり、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます