Ⅲ‐2
どこをどっから話したらいいのかな? えっとね、今の状況だけ手短に言うと、柏で高校生達に絡まれて、知らないパーマかけてツーブロックにしてる、うーん、同い年くらいかな? っぽいやつと一緒に逃げてる。
柏行こうってなったよね? 行ったのよ、一人で。ヨッチとかバンブーとか誘ってもよかったけど「何で急に?」って聞かれて隠すと嘘つかなきゃならないし、正直に言いたくもないから一人で行ったわけですよ。
行って、柏駅に着いて小便したくなって小便しに行ったらトイレで高校生三人に絡まれたわけです。それで、その時に俺と同い年くらいのパーマ頭のやつも一緒に絡まれてて、そいつがまた、絡まれても適当に流しとけばいいものを「あん?」とか言って高校生ぶん殴ってさ、一緒にいた俺まで巻き添え食らって逃げることになったわけですよ。
それで、逃げる時に俺、高校生に腕つかまれて、とっさに「離せよ!」って、ぶん殴っちゃったの。そしたらその殴られた高校生、結構効いたみたいで殴られたとこ押さえて座り込んでるわけです。
その時にね、相手の高校生は三人だったけど、俺達二人ならいけるんじゃねえかって俺もパーマ頭も思ったんだろうね。そのまま二人で高校生三人をボコボコにしたわけですよ。二人して「やるじゃん」みたいな会話してトイレ出たら同じ高校っぽいやつらが六人もいて、そいつらに気付かれないうちに逃げたんだけどバレて追っかけられたんだよね。駅からイトーヨーカドーの方に走って、そのまま逃げてさ、ようやく振り切った頃には汗だく。
「お前、俺のこと置いてこうとしただろ?」ってパーマ頭に俺が言ったら「だって、俺、お前のこと知らねえし」ってパーマ頭が言ってきた。
「さっきのやつらもそうだけど、お前も、この辺のやつじゃねえだろ?」
「うん。服を買いに来ただけだし。それよりお前、高校生をいきなり殴るなよ」
「地元で知らねえやつが偉そうに先輩風吹かせてきたらムカつくだろ」
「まあ、分からなくもないけども。えっ、っていうか地元なんだったらデートとかどうしてんの?」
「はっ?」
「いや、だから地元なんだったらこの辺のこと詳しいよね? まあ、デートはいいや。古着買いに来たんだけど店とか教えてくんない?」
「だったら、このまま旧水戸街道を真っすぐ行って、サンサン通り過ぎた所にあるよ」
「いや、一緒に行こうよ」
「何でだよ」
「いや、地元民なら詳しいじゃん。あと、デートに着てく服とか、どんなんがいいとか分かんないんだよね」
「俺とデートしてどうすんだよ、気持ち悪いな」
「デートとか言うなよ、気持ち悪いだろ」
「お前が先にデートがどうの言ったんだろ」
「いや、もうデートっていう単語使うのやめよ。古着の店、教えて」
「だから、このままこの道真っすぐ行ったらあるから行ってこいよ」
「一緒に行こうよ」
「それが気持ち悪いんだよ」
結局、俺がごねてパーマ頭と一緒に買い物をすることになった。俺は古着屋に行って初めて分かったんだけど、俺は古着があんまり好きじゃないっぽい。でっかい店から小さい店までパーマ頭は10軒くらい紹介してくれたんだけど、気に入ったのが見つからなかった。
芸能人とかミュージシャンが着てるの見るとカッコいいから欲しいと思ったけど、あれはおしゃれなやつが、自分に似合うやつを探して探して工夫して着てるから似合うんだってパーマ頭に言われた。
「っていうか、お前、どんなんが好きなんだよ?」って聞かれて、正直、俺は困った。それが分かんないから何となく古着って言ったけど、古着は俺の好みじゃない。
「初心者か?」って聞かれて「うん」って正直に答えるとパーマ頭がスマホをいじくり始めて「この服装は好きか?」って何個か画像で見せてくれた。
「俺が着てるのがストリート系。パーカーと下にジーンズとかジャージでスニーカー履いてるのよく見るだろ? これ系なら店も詳しいけど、お前違うっぽいよな?」
「うん、ジャケットが好き。パーカーは嫌いじゃないけど、下はジャージじゃなくてパンツがいい」
「もうユニクロかGUでよくね?」
「ユニクロもGUも俺の地元にだってあるわ」
「だから言ってんだよ」
「えっ? 柏にまで来てユニクロ?」
「だって、お前の好きなファッションって、ユニクロがぴったりじゃん。そんで靴買えよ、スタンスミスかニューバランスの何かでさ」
「えっ? 変じゃない?」
「俺の好みとは違うけどありでしょ」
「ジャケットとパンツはユニクロでもいいけど、パーカーは別のがいい」
「うるせえなおめえはよ、全然知らないくせに自己主張だけしやがって。これからの季節にパーカーとかかさばるからやめとけ。Tシャツでいいし、TシャツならユニクロもGUもいっぱい出してんじゃん」
「それでデートとか行っても変って思われない?」
「知らんよ。女によるだろ」
「多分、おしゃれ」
「多分って何だよ。お前、あれだろ、デートに行くための服、買いに来たんだろ?」
「うるせえな」
「分かったよ、悪かったって。大丈夫。服は好みだから変って思うやつは思うもんだけど、ユニクロのジャケットにTシャツでパンツだろ? それでスタンスミスなら文句言うやつは珍しいって」
「ホント?」
「多分。教科書通りでつまんないけどな」
「えっ? つまんないって何? ファッションにつまんないとかあるの?」
「何でもない。まずは靴買いに行こうぜ」
「ねえ、マルイも寄ってかない?」
「俺、地元だからマルイなんかいつでも行けんだけど。お前、一気に全部終わらせようとし過ぎだって。そんな急にデートになったん?」
「えっ?」
「そもそも、どんな子? 写真とかないの?」
「別にそんなんいいじゃん。デートとかそういうのじゃなくて、服買いに来たって言ってんじゃん」
「何だよ急に」
「靴買いに行こう」
「お前、まだその子に告ってないの?」
「うるせえな、マルイ行くぞ」
「やだよ、駅前にあいつらまだうろついてるかもしんないだろ」
「いいよ、あいつら弱いから俺が全員ワンパンでやってやんよ」
俺達は靴を買いに行くことになったけど、スタンスミスなら俺の地元でも売ってるからって、結局マルイに行くことになった。
ほんで、マルイは俺好みの服がいっぱい置いてあって欲しかったけど一着一着が高くて諦めて「結局おめえは何しに柏来たんだよ」って言われたけど「服買いに来たって言ってんじゃん」って言ったらケラケラ笑われた。
服も靴も何も買わないで帰ることになって「そうだ」って言ってLINEの交換しようってなった時に初めて「そういえば名前は?」って。
パーマ頭のそいつは
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