前のエピソード――Ⅱ‐８

　女バス騒動が落ち着いて、また朝から晩まで西島佳奈子のことばっかり考える日常が戻ってきた。

　すごく恥ずかしい話をするのだけれど西島とデートしたいと思ったんですよ。それで、デートするにはどこに行くか、ある程度それなりの所を知っていなければならないし、着ていく服だって一張羅って言ったら大げさだけど、そういった服を持っていなければならないわけじゃないですか。

　でも、俺はデートに行くってなっても、デートに行くような場所をまず知らないし、着ていく服だってイオンの服しか持ってない。

　デートだなんてバカなことを言ってるのは分かってる。この間だって喋りで失敗したばっかりだし「また会えるかな？」って聞いたら「分かんない」って言われたし。

　そもそも西島と、そういう恋人だ何だって話にすらなってないのも分かってるけど、もしもデートすることになったら困るじゃんって。

　もっと恥ずかしい話をすると、実際、想像してみるのとやってみるのとじゃ大違いなわけだから、試しにシミュレーションしてみようって思ったわけですよ。

　もし、西島とデートってなったら、どこ行くって映画を見るとかそんなんだよなとか思ったし、それで地元じゃなくてそれなりの街ってなるとここら辺じゃ柏だよなって。

　で、柏で映画見てバイバイっていうのは時間的にも短いから飯でも食べることになるわけでしょ？　俺は柏の映画館の場所も知らないし、その後でどこで何を食べるのが正解かも分からないんですよ。しかもイオンの服しか持ってないし。

　だから映画館の場所と、映画館周辺で遊べる場所とか、飯を食うとことか知ってなきゃいけないし、服も買わなきゃいけないよね？

　それでネットでも調べたんだけど、映画館は駅のすぐ近くにあるし、ゲーセンも食べるとこも駅の近くに結構ある。東口からサンサン通りに出て、でっかい十字路に着いたら左に行くと、古着屋がいっぱい並んでる。なるほど分かってきたってなって、服も買わなきゃいけないし、一度、柏に行ってみようってなったのであります。