Ⅱ‐1
クソ意地だけでもぎ取った自分の居場所は、動画熱が冷めて冷静になって見渡してみるとひどく殺風景なことに気付いた。
一人でいる時間が多かったから独り言も多くなってきてたし、ヤバいなぁって。ようやく外の世界と関わりを持とうって気になったっていうか、自分の殻に閉じこもってたことに気付いた。
このまま引きこもり一直線になる前に、携帯いじるのを一旦やめて別のことをしようってなったわけです。
それで、春休みにいい機会だから久しぶりにヨッチとバンブーと三人で遊んだんだけど、二人とツッコむ単語のチョイスが違うし、テンポもずれてて、会話の呼吸が全然違うことをお互いになじり合った。
バンブーに「ブランクがエグいって」って言われたけどマジで学校の情勢にも疎くなっちゃってて、誰と誰が付き合ったとかも全然知らなかったし、学校の覇者は当然のように俺だと思ってたんだけど二人の認識は違うみたいで、鏑木先輩が落ち目になってからは、これといって目立ったグループはいなかったし、そもそも覇者とか無いからって言われた。
「何だそれ?」って「1年前から北総中の覇者は俺に決まってんだろうが!」って言ったら「言ってることがムラケンと変わらない」って話になって「ムラケンの下位互換」だの「ジェネリックの方」とかバンブーとヨッチが言ってきて「鳥なき里のコウモリどもが調子こいとんか?」ってめっちゃ喧嘩になった。
誰がムラケンのジェネリックだ。安心安全で低価格じゃないんだよ。ヨッチとバンブーとは直接喧嘩をしたことは無いけど負ける気なんか全然しないし、何ならバンブーに喧嘩を教えたの俺だし。
「何か俺の優しさと控えめな性格がみんなを勘違いをさせちゃったみたいだな」って、二人に三年になってからは北総中の覇者が誰か教えてやるって高らかに宣言した。
それで、新学期になってから覇者として君臨すべく何かしようってなって、でも勢いよく二人にたんか切ったのはいいけど、覇者としてどう振る舞ったらいいか全然分かんなくて、いつもみたいに放課後になったらすぐ家に帰るのは違うんだよなぁって、学校には残ってたんだけど、やっぱり何も特別なことなんて起きなくて超暇だった。
そうだよな、これが嫌だったから家に帰ってたんだし動画にハマったんだよなぁって。
暇だなぁって学校の中をうろうろしてて、グラウンドや校舎を見渡すとどこもかしこもみんな部活やってて、何の疑問も無く当たり前に中学生をしてる。そういうのを見てたら自分が本当にその当たり前の輪から外れたことを実感した。
こんな所で何をしてるんだろう? そう思うと今の自分は滑稽だった。たまに遭遇する教師達は校舎をただぶらぶらしている俺をいぶかしげに見てきたし、テンション下がってきて、どこか静かな場所に行きたくなって、人が少なくて、できれば教師が来ない場所がよくて、覇者は導かれるように図書室に足を踏み入れたのである。
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