第18話

「なら、誰がフレデリカを雇っているのか教えてくれ」

「共和国の人。この王国に間者として紛れ込んでいる人」

「スパイが共和国から来ているとは。面白い」


 この王国の未来は暗いな。

 他国と黒い関係を結びすぎだ。

 ゲームでは、他国とそういう繋がりを持つ王国の奴がもっといた印象。


 よくシナリオ開始前までに崩壊しなかったな、王国。


「おしゃべりはここまで。だから、さっさとアネット・レズリーを説得して、情報を吐くよう頼んで」

「応じなかったら?」

「サイコロステーキみたくバラバラになりたいなら、ご自由に」


 彼女の実力は確かなものである――そんな確信が、俺の心を渦巻く。

 この環境の中で戦えば、たとえ【闇の帝王】を発動させても勝ち目はない。

 素直に従うのが吉と見た。


「わかった、説得してくるとしよう」

「話が通じて助かる。くれぐれも裏切ることのないように」


 魔法による障壁が解かれ、アネットがいる部屋への侵入を果たせた。

 彼女が縛られていたのは、一見するとただの紐に他ならなかった。

 無属性魔法ですぐさま解く。


「大丈夫か、アネット!」


 しばらく気を失っていたらしく、返答があったのは、ややあってのことだった。



「助けに来て、くれたのかしら……?」

「当たり前だ。脅迫状を送られたからとか、そういう以前の問題だ。仲間の窮地に知らん顔を決め込む奴がいるか」


 俺はやや声を潜めた。

 アネットはきまりが悪そうに語り出す。


「べ、別に助けてほしいなんて思ってなかったわ! これは私と古代魔法の間の話なんだからねっ!」

「そのくらいわかっている。問題はこれからのことだ」


 ここであっさりと命を譲り渡す破滅エンドは御免だ。

 かといって、握っている情報を完全に明らかにしては困る。

 いずれにしても、状況は苦しいものであった。


「いったいどうすれば」 

「……デクスター様、私に案があります」

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