第17話

「フレデリカ、お前の目的はなんだ」

「気になるのは重々承知してる。でも、そちらも名乗るというのが礼儀じゃないの?」

「大事な仲間をを誘拐しておいてよくいう……俺はデクスターだ」

「私はシャーリーです。これでよろしかったですか?」


 シャーリーは依然として警戒心が抜けておらず、ぶっきらぼうな返答をした。


「……アネットはどこだ?」

「ここ」


 扉を全開にする。


 写真の通り、口と手足を封じられている。

 魔法によって、それらを解き放とうと試みる。

 だが、部屋にはなんらかの結界が張られているようで、まるで攻撃が入らない。


「無駄だからやめた方がいいよ。話をしよう」

「なぜアネットをさらったのか説明してくれ」

「うん。私がアネットをさらった理由は、とても単純」

「単純?」


 いうと、フレデリカはこくりとうなずいた。


「古代魔法の研究資料が必要だったの」

「それなら誘拐する必要がないだろうが」

「私たちが必要な資料は、彼女の解読能力なしでは読み解けないから」


 曰く、アネットは古代魔法の分野で超最先端をいっているそうで。

 アネットが所有するという、世界の理さえ変えうるといわれた力について書かれた古文書を求めていたのである。


「そんな力を手に入れてどうするつもりだったんだ」

「強大な力を手に入れたら、目的を果たせるから」

「答えになっていないように聞こえるが」

「でも、それ以外に説明のしようがないから」


 うまく情報を掴めそうにない。

 果たして無事にアネットは解放されるのか。

 正直イエスともノーともいい難い。


「あんたは何かの組織の一員なのか?」

「どちらかといえば違うかも。私はただ雇われているだけ。邪魔者を消す、暗殺者として」


 ――暗殺者。

 現実世界で実在しているのを一度も見たことがないにも関わらず、創作の中では大活躍している職業。

 凡人が見れば、彼女の愛らしさからは暗殺者たらしめる要素は発見しえない。


 しかし、実際のところは違う。

 熟練した技量を持ち合わせているであろうオーラがそこかしこに漂い始めている。

「気」を見せてきたのだろうか。


「俺たちもこのまま消す予定だから、ペラペラ語ってくれていると?」

「もちろん。私も間抜けじゃないから」


 対話に応じる気にはなってくれていたものの、結局殺す気満々だったわけか。

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