3
「おい、あいつら知っているか?」
「いや、知らねぇ」
「おいおい、じゃあビギナーって事か?」
「いや、そもそもあれだけの魔法が使えるって事は……魔法学校に行ってんじゃねぇか?」
「まさか! なんでそんなヤツらがこんなイベントに出てんだ?」
「いや、でもよ……」
あっという間に周囲からそんな話し声がチラホラと聞こえ始めていた。
――まぁ、疑うのも無理ないわね。
そう、本来であればこういった『お祭りのイベント』に貴族が参加する事はほとんどないだろう。
――このリアクションを見る限り、どうやら去年殿下たちが参加したのは知られていないのね。
もしそうであれば、もっと騒ぎになっていた可能性が高い。
――まぁ、あのプライドの高い殿下が「準優勝」を威張って言う様な人間ではないけれど。
「……随分注目されているな。俺たち」
そんな中、シリウスはどことなく落ち着かない様子で私に尋ねる。
「そうみたいね」
――まぁ、体力を温存して結構良いところまで来られたし。
ただ、少しすれ違っただけでジロジロと見られるのはあまり良い気分がしないのだが。
「でもまぁ、あんだけ派手に魔法を使っていれば……当然か」
しかし、シリウスはそう言ってなぜか少し寂しそうな表情になる。
――でもまぁ、仕方ないわよね。
実はこれまでの試合は全て『私一人』で勝っていた様なモノだったからだ。
――あんまり目立ちたがりな性格ではないと思うけど。
それでもやはりこういった形式では「目立ちたい」という気持ちになってしまうのだろう。
「……そんなに言われるほどの事はしていないわよ?」
しかし、私から言わせれば私がした事と言えばせいぜい「風魔法を使って相手を場外に誘導した」くらいの事だ。
――それなのに……随分と大袈裟ね。
「あれを『ちょっと』で済ませられる人間はそういねぇよ」
「そう? でも、あなたのサポートのおかげでもあるとは思っているわよ?」
あまりおおっぴらにはしていないモノの、実はシリウスの『闇魔法』を使ってもらっていた。
「……よく言うよな。あんた別に俺のサポートがなくても戦えるじゃねぇか」
「まぁ……そうね。でも、さすがに連戦が続けば私だって疲れるのよ」
そう、コレはトーナメント制だ。
最初でこそ時間がかかるが、勝ち抜いていけば行くほど休憩の時間は短くなっていってしまう。つまり、後の事も考えて行動しなければジリ貧になってしまうのだ。
――でも、だからと言って勝てないと何も意味がないのよね。
要するにそこら辺の力加減も大事という事だ。
「でもまぁ、もう準決勝ね」
「ああ。あんたがあっという間に勝っちまうから係の連中も大慌てだ」
「あら、あんまりダラダラとしても良くないでしょ?」
「それにしたってある程度の『段取り』ってもんがあるんだろ」
シリウスの言葉に、私は「ふむ」と考え込む様な素振りを見せると。確かに想像よりもトーナメントが進んでいるせいか、係の人が忙しなく動いている。
――さすがに……ちょっとやり過ぎちゃったかも。
そんな様子を見てしまうと、少し申し訳ない気持ちになってしまう。
「!」
――コレって。
その時。私は『ある事』に気がつき、思わずニヤリとする。
「? どうした?」
「いいえ。でもまぁ、次は……今までの様に簡単には……いかないかも知れないわね」
「? それってどういう……」
シリウスがそう言った瞬間……ちょうど影になっていた場所から『ある人物』が私たちに向かって歩いてきた――。
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