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「で、朝に話していた事なんだが……本当に、それでいいのか?」
そう問いかける彼の後ろでは白熱した戦いが繰り広げられている。
――番号を呼ばれて結構経ったと思うけれど……。
どうやらお互いの実力が拮抗しているのか、なかなか決着がつかないらしい。
――イベントとしては大成功ね。コレだけ白熱するのなら。
「ええ。あなたが去年優勝したペアと私が連想している人たちが一致しているのであれば……少なくとも一回戦で負けるなんて事はないと思うわ」
「いや、でもなぁ」
やはり物申したい気持ちがあるのか、シリウスはどことなく歯切れ悪く答える。
「気持ちは分からなくもないわ。でも、出来る限り温存したいというのが正直なところなのよ。それに、秘密兵器は最後まで取っておかないとね」
「そう言ってくれるのはありがてぇけど」
「もちろん。臨機応変に対応するつもりだし、何もするなとは言わないわよ?」
「そりゃあそうだろ。俺だって攻撃が来ているのに指示がないから避けませんってワケにはいかないだろ」
――それはそうだけどね。
「ただ、あんたに全て任せるのはやっぱり気が引けるって言うか……」
「でも、何も経験がないのなら、多少は経験のある私に合わせた方がいいでしょ?」
「……まぁな。お互い喧嘩して負けましたって言う方が格好悪ぃ」
「後は私の予想が当たるかどうか……ってところなのよね」
正直、コレに関しては微妙なところである。
もしかしたら、去年は偶然王子たちが勝ってしまっただけで、本来はもっと実力上位者が出て来る可能性も否定は出来ない。
――でも、今年も去年と同じ感じなのであれば……。
最後の魔法試験で王子に圧勝した私一人で勝てる可能性は十二分にある。
――ただ、懸念があるとするのなら……。
それはこの大会が『ペア』での参加という事だろう。
シリウスの『四大魔法の実力』は最初に会った頃よりも段違いに上がっている。しかし、実戦的な話で言うと……若干心許ない。
――徐々に段階を踏むことを考えると……最初から全てを見せるのは得策じゃないのよね。
「あ、そうだ。もう一度確認だけど」
「ん?」
「別に二人とも試合中に一回は魔法を使わないといけないって決まりはないのよね?」
「あ、ああ。よく初っぱなに大きな魔法を使う事はあるからな」
シリウスの答えを聞き、私は「そう、それは良かった」と笑顔で返す。
そして、そのタイミングでちょうど前の試合が終わったらしく、係らしき人から「次の方。準備をして下さい」と声をかけられる。
「……まぁ、あんたのお手並み拝見って事にさせてもらうよ」
「ええ。あ、でも……」
「分かっている。サポートは任せろ。その練習は……ちゃんとしていたからな」
そう言いつつ立ち上がったシリウスはげっそりした様なリアクションを見せる。
「何『自分だけ大変な思いをした』って顔をしているのよ。言っておくけど、サポートを受ける私も大変なんだからね。調整が」
「あー、そうだったな。あれ、父さんにバレてないよな」
「今のところはごまかせているって聞いたわ」
「じゃあまずはその修理からか」
「――優勝出来たらね」
私がそう言うと、シリウスは「いや、あんたの家から出させる」と言って先に会場へと行ってしまった。
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