第9章 元『悪役令嬢』と王子の再会
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そうして迎えた当日――。
会場に到着して向けられる視線は「おいおい、あんな非力なお嬢さんが出るみてぇだぞ」とか「よしよし、勝ったな」とか言う様な品定めにも似た視線だった。
――でも、コレって「品定め」って言うかなんと言うか……。どちらかというと「力の見定め」ってところかしら。
ちなみに「品定め」というのはお茶会や夜会……そういった貴族たちが集まる場ではむしろ「当たり前」のモノだった。
――まぁ、婚約者が決まっていない女性たちの視線の方がもっと鋭かったけれど。
そう、それはまるで「獲物を見定める狩人がごとく」である。
――ただ、人を「見た目」だけで判断していたら……確実に足元をすくわれるわね。
先程からチラチラとこちらを見ては何やらコソコソと話している人たちは、そのほとんどの人が簡易的ではあるモノの防具を付けている。
――それってつまり「魔法は使えるけど」ってだけで、練習とか勉強はしていないって事なのよね。
しかし、だからと言って油断は禁物である。
なぜなら、こうした人たちは庶民出身で、勉強などはしていなくても狩りなどで普段から魔法を使っている可能性があるのだ。
つまり「練度」という「経験」の意味では向こうの方に軍配が上がる可能性が強い。
――結局、油断出来る相手なんていないって事なのよね。
もちろん、相手が油断してくれるというのであれば、こちらは全力を出すまでの話なのだが。
「なっ、なんて言うか……」
「?」
「すげぇ見られているな。俺たち」
「ああ、多分。この会場の参加者でパッと見て貴族だって分かるからでしょ」
「なっ、なるほど。確かに」
チラッとシリウスが視線を向けると、そこには筋骨隆々な男性たちの姿。それを見ると、シリウスは少し悲しそうな顔をした。
「なっ、何」
「いや、俺って貧弱なんだな……と」
「比べる対象が違い過ぎるでしょ。言ってしまえば、騎士と魔術師くらいの違いよ?」
「それでも……だ。やっぱり男としては憧れるんだよ」
そう言って暗い表情になるシリウスに対し、私は「そんなモノなのねぇ」という気持ちだった。
何せ、私の周りの女性陣はそこまで『筋肉』に憧れがあるワケではなかったからだ。
――もちろん「好き」な子もいたけれど。
「まぁいいわ。それより、早速私たちの出番なんじゃない?」
私が沈んだ表情のシリウスにそう問いかけると、シリウスは「そうだ!」と言わんばかりに顔を上げる。
そして、そのタイミングで……。
「次、エントリーナンバー三〇五番の方! 準備をして下さい!」
ちょうど係の人に番号を呼ばれ、私たちは顔を見合わせて会場の控え室へと向かったのだった――。
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