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さすがこの領地を治める貴族の一人息子が「一大イベント」と言うだけあってか、そこは出入り口以上の人が列を成している。
「こっ、こんなに出るの?」
「ああ。何せこのトーナメントの参加資格は『魔法が使える事』ってだけだからな。しかも、賞金も出る。まぁ、どちらかと言うと、そっちメインだってヤツは多いな」
「へぇ……という事は違う人も当然いるのよね」
「ああ、他は……そうだな『名誉のため』ってヤツもいたな」
「名誉?」
「まぁ、大袈裟な話ではあるけどな。それだけこのトーナメントには実力者が出るってワケだ」
シリウスにそう言われ、私は改めて参加受付をしている人たちを見る。
確かに、シリウスの言う通り「歴戦の猛者」とも言える風格を持っている人もいれば「自分の力試し」に来ている人も多そうだ。
「たまに国立の魔法学校に通っているヤツと都立の魔法学校に通っているヤツが当たる事もあるんだよな」
「そうなの? 確かに今は入学が決まったばかりか卒業したばかりの人しかいないけど、見て分かるものなの?」
「あー、なんつーか。そういった魔法学校に通っているヤツの戦い方って……見ていて分かりやすいんだよな」
「なっ、なるほど」
言われて見ると確かにそうかも知れない。
――そういえば一度見学に来た騎士の一人が「お利口な戦い方」って言っていたかしら。
一応、学校では「戦い方」の講義は受ける。しかし、それがかえって「お利口な戦い方」にしてしまっているのかも知れない。
――まぁ確かに「臨機応変に」とか「不測の事態」には弱いかも知れないわね。
それは授業の一環で薬草取りをしに行った時に出くわしたモンスターを前にした時に腰を抜かした同級生たちを見た時に思い知った。
「……あれ」
――待って。
しかし、今思い返してみると……少しおかしい事に気がついた。
「? どうした?」
「うっ、うん。何でもないわ」
――でも、本来モンスターに出くわすのって……主人公のはずよね? しかも、コレって大事なイベントの一つのはずよね?
そう、このイベントはいわゆる「好感度イベント」と言うヤツで、このイベントは攻略対象の好感度が大きく上がる大事なイベントの一つだったはずだ。
しかし、このイベントの肝である「モンスター」をおびき寄せるきっかけになったのは……本当は私が当時つけていた香水のせいだった。
――でも、あの時……。
私はそれを知っていた事もあり、香水をつけていない。
だが「モンスター」は現れたのだが……主人公はその場におらず、結局私がそれを対処せざる負えなくなった。
――まぁ、大事にはならなかったけれど。
一歩間違えばけが人どころの騒ぎではなかったはずだ。
――でもまぁ。
それも今更な話でしかないのだが。
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