第8章 元『悪役令嬢』降り立つ

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 そうして迎えた『お祭り』当日――。


「すごい賑わいね」

「ああ、毎年この祭の賑わいはすごいからな」


 そう言うシリウスはどことなく得意げだ。


 ――まぁ、そう思うのも無理ないわね。


 このお祭りは私が思っていた以上に大規模なモノだったらしく、たくさんの人が来ている様だ。


 ――よく見ると……この国の人だけじゃないみたいね。


 実は、この国は『島国』でここに来るには基本的に移動手段は船になる。


 ――まぁ、中には『ほうき』を使って来る人もいるけど。


 ただ、そうするにはまず隣国から出発しなければならず、しかも地図で見るよりも遠い。


 ――でもまぁ、そんな物好きなんて……なかなかいないわね。


 残念ながら、この世界では「転移魔法」はなく『ほうき』を使わずに移動するにしても、せいぜい小さな部屋を行き来する程度しか出来ない。


 ――まぁ『ほうき』はあくまで「飛ぶ」という時の補助みたいなモノだし。


 しかも、隣国からこの国に来るための船は定期的に出ている上に低額なので、基本的にそちらを利用する人ほとんどだ。


 ――だから「ほうき」を使って来る人はよっぽど差し迫った理由がない限り……だけど。


 そして元々このお祭りは『収穫祭』だったらしく、たくさんの出店が出て賑わっている。


「このお祭りで出店を出すには書類を実行委員に提出して少額の使用料を払えばいい。だからなのか毎年すぐに参加枠は埋まっちまうらしい」

「へぇ」


 ――じゃあ、特にこの国の人じゃないといけないとか、この地域の人じゃないといけないとかおんな決まりはないのね。


 シリウス曰く「今はこの祭の意義は『色々な国の人との交流』になっている」らしい。


「あんたは……興味なかったんだな」

「えーっと」


 お祭会場の出入り口にはたくさんの人が行き来しており、一度入ったら出るのは難しそうなくらい人でごった返している。


「きょっ、興味がなかったワケじゃないのよ? 興味がなかったワケじゃないけど……」


 ――正直「それどころではなかった」という方が感覚としては近いんだけど……って、ちょっと待って。そもそもな話。


 私はこのお祭りの存在自体知らない。


 ――まぁ、ゲームの設定上。全て魔法学校で完結しちゃっていたし、それ以上でもそれ以下でもなかったから。


 しかし、この世界で生きていくとなれば「何も知りません」では済まされないだろう。今更な話だが。


 ――幸いな事に国外追放にも身分剥奪にもなっていないし。


 今は「傷心旅行中の身」ではあるものの、さすがに今のままではいかない。


 ――帰ったら……ちゃんと「これからの事」を考えないと。


「まぁ、いいけどな。で、この祭の一大イベントが……明日行われる『魔法トーナメント』ってワケだ」


 シリウスはそう言って祭の中でも一際賑わっている『魔法トーナメント参加受付』の方を見た――。

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