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 ――でも、そこまで隠す程の事かしら?


 確かに『闇』と聞くと、人によってはあまり良い印象を受けないとは思う。しかし、そもそも『その他』の魔法自体、かなり稀少なのには違いない。


 ――ただ、先祖代々なのにあまり知られていないのは……ちゃんとした『理由』があるんでしょう……とは言え。


 まずはそれぞれの『四大魔法』がどれだけ使えるかを確認しなければならないだろう。


 ――多分、彼は「四大魔法があまり出来ないのは、基礎が出来ていないからだ」と考えたんでしょうね。


 そうしてシリウスは『魔法の基礎の基礎』と呼ばれる事をしていた……というワケだ。


 ――まぁ「普通」であれば、それが魔法全体の底上げになるんだけど。


 彼の場合は「いくらそれをしても上手くならない」という事になってしまっていたのだろう。


「とりあえず、一度『四大魔法』を一通りしてもらおうかしら?」

「え、いや……」

「あら、何よ。一度やってもらってどれくらいのレベルなのか分からないとこっちもどう指導すればいいのか分からないじゃない」

「……」


 現に「彼の魔法素質が『闇魔法』に全降りになっている」という事は分かっている。しかし、それで「はい、分かりました!」では終われない。


「あなたが開き直って『闇魔法』を極めるって言うのであれば、それはそれで考えなくちゃいけないの」

「……」


 そう説明すると、シリウスは観念した様な顔で「分かったよ」と答えた。


「とは言ってもよ。あんまり期待すんなよ」

「ええ」

「後、危ねぇと思ったらすぐに逃げろよ」

「……分かったわ」


 そう言ってシリウスは私と距離を取る。


 ――なるほど「危ない」って自分で自覚しているという事は……。


 決して「魔法の出力が心許ないというワケではない」という事を意味しており、それを彼自身が分かっているらしい。


 ――と、言う事は……。


「じゃあ、まずはアンディさんが得意としているであろう『水』からかしら」

「なんだよその『得意としているであろう』って」


 シリウスは私の言葉に「ふっ」と笑う。


「仕方ないでしょう? 実際に見たわけじゃないのだから」


 ふて腐れた様に言うと、シリウスは「まぁ、そうだな」と苦笑いを見せ、すぐに真剣な眼差しなり……。


 ――来る。


 そう思った瞬間。シリウスから大きな水柱が立ち上がった。


「……ふぅ」


 ――ふーん、なるほどね。


「なっ、なんだよ」

「そう……ねぇ。私が見立てだと、もう少し大きいモノが来ると思っていたわ」

「つー事は……なんだ?」

「うーんと、さっきの基礎の基礎を見た限り、もっと出力が出てもおかしくないなと思ったんだけど……まぁ、他の魔法がそうかも知れないし、次は『火』にいってみましょうか」

「あっ、ああ」


 シリウスは「よく分からない」といった表情ではあったものの、意外と素直に従う。


 ――それだけ「どうにかしたい」って事なのでしょうね。


 しかし、先程の水魔法を見て私が感じたのは実は「出力」の方ではなく「水柱が出てしまった」という事だった。

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