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「えーっと、つまり?」
しかし、私の話にいまひとつピンときていないのか、シリウスは首をかしげる。
――いや、自分の事でしょうに……。
なんて思ったが、実際のところ。私もこうして自分の事。いや、サーシャ・グレイブとキチンと向き合ったのはこの世界に来てからである。
――前世ではまぁ、あんまり自分の事分かっていなかったし、人の事。言えないか。
そこで私は「はぁ」とため息を一つつき、シリウスに近づく。
「?」
「だから! あなたの得意魔法の属性が完全に『その他』に振り切られているから『四大魔法』が使いづらくなっているって事!」
「なっ、なるほど」
「ただでさえ四大魔法が使いづらいのに応用なんて出来るワケないでしょ?」
シリウスは私の切羽詰まるような反応に、思わず後ずさりをする。
「――とは言え、今のあなたのリアクションを見た限り。そもそも『闇魔法』の存在は知っているけど、あまり練習をしていないみたいね」
「……」
――まぁ、詳しい話は知らないけれど。
多分、シリウスはあまり『闇魔法』を使いたくないのだろう。ただ、その理由は分からない。
私はむしろ、どちらかと言うと「使えるモノは使いたい」という人間なので、シリウスの事情までは分からないというのが率直な気持ちだ。
「で、ここからが本題」
そう言いながらそこで言葉を句切る。
「?」
「正直、あなたたちの家の事情は分からないし、探知で『闇魔法』という事は分かっても実際どういう魔法を使うかまで私には分からない。ただ、あなたが好きこのんで使いたくないって事は分かったわ」
「……」
「で、あなたは……いえ、あなたの家は出来れば『闇魔法』を表に出さずに別の『四大魔法』のいずれかを使いたい……という事でで合っているかしら?」
私が尋ねると、シリウスは黙って「頷くこと」で答える。
――でもまぁ、コレで何となく『クロムエル家』と『闇魔法』の関係と、貴族の位の話も何となく分かったわ。
つまり『クロムエル家』が侯爵の地位にいるのは、少なからず『闇魔法』が関わっているという事が分かった。
「……元々」
「?」
「俺の家は代々『闇魔法』を継ぐ。ただ、本来であれば『闇魔法』だけじゃなく『四大魔法』のいずれかも……継ぐか練習して使える様になるらしいんだが」
「あなたの場合はいくら練習しても上手くいかないってワケね」
本来、先程シリウスが練習していた『基礎』は「全ての魔法の基礎」に当たり、それは『四大魔法』に限らず『その他の魔法』も含まれるという事を意味する。
――だから、この『基礎』の完成度は高いのよね。
「でもまぁ。代々そうだと言うのなら、本当にどうにかしないといけないわね。事情は知らないけど、学校でも表立って言っていないところを見るに、あんまり『闇魔法』が使える事を知られたくないんでしょ?」
私がそう尋ねると、シリウスは無言で頷き、私はその様子を見て「この『闇魔法』には隠す程の理由がある」という事が何となく分かった様な気がいた。
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