第5章 元『悪役令嬢』の見立て

1


 正直、この「魔法属性の探知」に関しては近しい人以外には言っていないが、実戦慣れしている人はすぐに分かるらしい。


「……俺。基礎出来ているのか?」

「あら、自覚なかったの?」

「いや、だってよ。成績見ても下から数えた方が早いしよ」

「それは試験の結果しか見ていないからでしょ? 裏面にキチンと個別の内訳とか書いてあったわよ」


 私がそう言うと、シリウスは「え!」と驚きの表情を見せる。


 ――あー、いるのよね。こういう点数しか見ていないタイプ。それで、個別に見ていないから苦手が分からないってね。


「で、私の見立てだとあなたの魔法属性は……さながら『闇』ってところかしら」

「!」


 ――この反応は、当たりね。


「でも、あなたのお父様。アンディさんは『闇属性』もあるけど、主体は『水』ってところかしら?」

「……話したのか。父さんが」

「……いいえ? あくまでの私の見て感じた事よ。でも、私の探知は結構良い線ついているらしいから」


 コレは決して自慢のつもりはない。現に実戦慣れしている人の中にはこの「探知」が使える人は結構いる。


 ――表立って言わないだけで、学校内にも結構いたんじゃないかしら。


「……へぇ、さすが国立の魔法学校卒業だな」

「あら、それは嫌みかしら?」

「いいや? もしそう聞こえたのなら、悪いな」

「……」


 ――全然悪びれている感じがしないわね。


 しかし、実は国立と都立でこういった「確執」の様なモノがある。


 ――まぁ「自分で選んで」という人もいるんだけど……。


 だが実は「魔法」を学ぶ者としては「やはり国立に!」という傾向が強いのも確かである。


 ――しかも、その傾向は上位貴族ほど強いのよね。


 この国で「魔法が使える」という人は何も貴族だけではなく、数は少ないモノの庶民にも存在する。


 そして、元々「都立の魔法学校」が作られた理由もその「魔法に慣れていない庶民の為」だった事から、貴族の間では「貴族であるならば国立に行くのが当たり前」という意識が強かった。


 ――で、中にはお金に物を言わせて裏口入学……なんて事もあるのよね。


 親としては「子供のために」なんて事が言えるが、結局はメンツのためであって一番苦労するのは、裏口入学させられた子供本人なワケなのだが。


 ――しかも、座学は多少の誤魔化しが出来ても、実戦試験はそうも言えないのよね。


 実戦は基本的にみんなに見られながらやるため、不正はすぐにバレてしまうのだ。


 ――まぁ、そもそも「不正をしよう」なんて考えるお馬鹿もどうかと思うけど。


「まぁ、私の話は良いのよ。それよりあなたの事」

「俺?」

「そう、あなた。アンディさんとは違って属性が完全に『闇』なのよ」


 私は腕を組みながら自分の見解を彼、シリウスに説明した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る