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 そうこうしている内に馬車に揺られる事早三日――。


「あ、見えてきましたね」

「ええ!」


 外から見える景色は少し古びた屋根が低い建物が多かったけれど、それはこの地域の環境ならではのせいだろう。


 ――なっ、何はともあれ……長い道のりだった。


 夜は宿屋で休み。基本的に日中はずっと馬車に揺られていた。退屈なのもそうだが、とにかく「ずっと座りっぱなし」というのはなかなかに辛い。


 ――コレで道がガタガタだったら……と考えるとゾッとするわね。


 正直、前世の「電車」を使えば三時間……いや、もう少しかかるかも知れないけれど、少なくとも日をまたぐ事はないだろう。


 ――でもまぁ、さすがにそれは「無い物ねだり」っていうんでしょうね。


 さすがにそんな専門的な知識を持っているワケではないし、そもそも現実的な話じゃない。


 ――それよりも「空間転移」とか「空を飛ぶ」とかそっちの『魔法面』で考えた方がこっちの世界らしいかも知れないわ。


 この世界には『魔法』というモノが存在し、先日私が卒業したのも『魔法学校』だ。


 ――一応、主席で卒業したんだけど。


 ただ、卒業証書をもらうのはいつもであれば……いや、伝統的に「座学実技共に総合成績一位の人物」なのだが、私の学年には殿下がいたため、殿下が代表としてもらう運びとなった。


 ――まぁ、この時にちょっとした一悶着があったんだけど。


 それは「伝統を破る気か!」と数人の貴族から異議が出たためである。


 しかし、本来のゲームの設定では「殿下は文武両道」となっていたため、そもそもこういった話が出るはずもなかったのだが。


 ――それがいつの間にどうしてあんな色恋に溺れた腑抜けになっちゃったのかしらね。


 いくら私が前世の記憶を取り戻した後に猛勉強をしたとは言え、まさか私が学年首位を取るとは思っていなかった。


 それに、実戦試験では殿下と戦う事になり、コレには本当に驚いた。


 ――だって、ゲームでは『悪役令嬢』と主人公の直接対決だったし。それで、確か直接対決で敗れたサーシャが主人公の背中を押して……ってあら?


 そこまで考えて私はふと考える。


 ――今の話、どこかで……あ。


 その時頭を過ぎったのがお父様から聞いた主人公の言い分だ。


 ――あー、それじゃあやっぱりあの子。転生者だったんだ。


 実は前世の記憶を取り戻して以降。極力主人公を避けていた為、私は直接的な面識はなく、あくまで『予想』しか出来なかった。


 ――でも、コレで確定ね。


 なぜなら、この話を知っているのはゲームをプレイしている人間だけだからだ。


「お疲れ様です。お嬢様」


 アンナは考えている私に対し優ししい声色で言い、私は「アンナもね」と笑いかける。


 そもそも、アンナがいなければこの馬車での移動もきっとつまらないモノになっていただろう。それを考えると、やはり「アンナがいて良かった」と思う。


「――はい、分かりました」


 そんな事を思っていると、馬車を運転している運転手から声をかけられ、アンナはそれに答える。


「どうしたの?」

「このままクロムエル家へと向かいます」

「ええ、分かったわ! おっと」


 アンナの言葉にそう答えると、少しスピードが上がったらしく、私は少し驚いてしまった。

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