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「それで私たちは現在。旦那様の『提案』を受けた為に、移動しているのですよね?」
「ええ……って、あなたまさか、何も聞かずに来たの?」
アンナの「確認しますが」と言わんばかりの言葉に、私は思わず反応してしまう。
「私はお嬢様の元を離れるつもりはありません。お嬢様がどこか別の国に行ってしまうのであれば、私はそれについて行きます」
「……アンナ」
そう宣言する様に言うアンナに対し、私は「感激!」という感情よりも……。
――まっ、まさか。あの日、考えていた事が口に出ていた!? いや、そんなはずは。
そちらの心配の方が勝っていた。
「大丈夫ですか? お嬢様」
「……」
私があまりにも焦っていたからだろう。アンナは私の身を案じる。
「いっ、いえ。大丈夫よ」
――本当に、健気ね。
「そうですか」
表情こそ変わらないモノの、声の調子はどことなく「良かった」とホッとしている様に聞こえた。
――きっとこの言葉はアンナの本心なのよね。
だからこそ、ゲームの中の様にサーシャに言われるがまま、命じるがまま行動していたのだろう。
――思い返してみると、ゲームではサーシャが退場した後のアンナの話はなかったわね。
結局のところ。ゲームのアンナがどういった行動を取ったのかは分からないが、多分。サーシャが国外追放。もしくは身分剥奪になったとしても、一緒について行ったのだろう。
――そういえば、ゲームでサーシャが処刑されるエンドはなかったけれど……あ。
ただ、それはあくまで前世での私がバッドエンド以外をプレイしていなかっただけで、全てをクリアした友人曰く「リオン王子のバッドエンドではサーシャが処刑されちゃうの!」と盛大なネタバレをされたのを思い出した。
――まぁ、元々バッドエンドに興味はなかったから良いんだけどね。
そして、その友人曰く「それで主の敵! って主人公がサーシャのメイドに殺されちゃうの」と言っていたのを思い出した。
――でも。本当に、サーシャを慕っているのね。
この話を聞いた後、私はこうしてサーシャの立場になったのだけれど……こうしてみると、本当にそれがよく分かる。
「まぁ、いいわ。とりあえず、これから向かうのはお父様の遠縁に当たる方の家らしいのよ」
「遠縁の方……ですか」
「ええ。私も小さい頃に会った事があるらしいけど……」
正直言って全くもって覚えていない。
「なるほど」
「まぁ、お父様曰く『私の気分転換も兼ねて』らしいけど」
「――と、いう事は『それ』だけが理由というワケではないという事でしょうか?」
「それは分からないわね。何せお父様は『ちょうどお前と会ってみたいと言っていた』とは言っていたけど、詳しい事は何も言っていなかったし」
――さすがにとんでもない話がくるとは思えないけど。
「まぁ、せっかくお父様が与えて下さった機会だもの。ちょっとした気分転換には……なりそうね」
チラッと見る景色は先程と何も変わらない。
しかし、それはつまり我が家がある都会とは違う田舎の風景は、貴族間の争いや干渉の影響があまりないという事を意味している様に見えた。
「……」
私はその光景を見ながら少しホッとしていると、アンナは「そうですね」とどこか楽しそう……いや、嬉しそうな声で答えた。
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