第2章 元『悪役令嬢』辺境の地へ向かう
1
「……」
――そうしてまたも馬車に揺られている……と。
チラッと窓の外の方を見ると、そこには木々が生い茂る森が広がりっている。ただ、馬車が通る道は整備されており、道中はなかなか快適だ。
――まぁ、あくまで「他の道と比べると」なんだけど。
「本当に……変わりましたね」
「あら、アンナも分かる?」
そう呟く言うアンナに対し、私は笑いかける。
「はい。本当に、揺れが少なくなりました」
「そう、それは良かった」
私はそう言ってもう一度外の景色を見る。
「……」
殿下に婚約破棄をされ、最悪の場合は『処刑』良くて『国外追放』か『身分剥奪』だと思っていたのが、今では『ある場所』に向かうため、こうして馬車に揺られている。
――まさか、こんな事になるなんてね。
実は、前世の記憶を取り戻したばかりの頃。和足はこの想像以上に揺れる馬車に本当に驚いてしまった。
――コレが理想と現実の違いってヤツなのかも知れないわね。
小さい頃の私はあるおとぎ話を見て「馬車」というモノに憧れを持っていたのだけれど、この「乗り心地の悪さ」には心底驚いた。
しかし、貴族たちはどちらかというと「この揺れに慣れてしまっている」ので「今更」というところもあったらしい。
――でも、陛下としてはどうにかしたかったのでしょうね。
ただ、この道の整備の話は『記録型魔法玉』を設置するよりも前の話である。
――まぁ、なんでも「ワシの娘は成績優秀だ」というお父様の話を聞いた陛下が私の元を尋ねた際にさり気なく聞かれた事に答えただけだったんだけど……。
「しかし、本当に良かったのですか?」
「何が?」
――それがどうしてこんな大事になったのかしら?
「この道の整備にはお嬢様が大きく関わられました。ですが、お嬢様は何も」
「ああ。でもまぁ、こんな小娘じゃなくてお父様の名前を出した方が何かと都合が良かったから」
本来であれば勲章モノの出来事らしいのだけれど、私としてはとにかく「目立ちたくない」と「目を付けられたくない」という理由から、丁重に辞退させて頂き、代わりにお父様に受け取ってもらう運びとなった。
――まぁ、妥当な線よね。
そして道路整備の為にはかなりの人手が必要となり、新たな働き口として住民にとってはありがたい話にもなったそうだ。
「何せ国を上げての話だし、陛下が直接下した命令だしね」
「なるほど。確かに旦那様が最終的な確認もしていますし、定期的に査察もしていますから」
私はそれに対し「そうそう」と頷く。
「道の整備の仕事をしている人は基本的に住み込み。しかし、共同住居が完備されていてご家族で入居も可能……食材や調理場も完備されているので、住民にも人気の働き口になっているそうです」
「そう」
「コレもお嬢様のご意見を参考にされていると聞きましたが」
「参考にしたのはお父様で、私はただ少しお話をしただけよ?」
私がそう言うと、アンナは「そうですか」と言いつつ、少し笑っていた。しかし事実名のだから否定はしない。
――目的地は……まだ先ね。
まだまだ続く道と緑を見ながら、私は思わずため息をつく。いくら快適になったとはいえ、馬車で何日も揺られるのは……やはり慣れない。
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